地方創生 〜アフターコロナの新しい形〜

海、食も魅力アップに活用 実装に入った地方創生 具体的事例から考える持続可能な経済循環

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■基調講演 ベンチャー、中堅中小企業で活性化する地方創生

潜在成長力のある 志高い企業を支援

中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 部長 松尾 一久 氏

 中小機構では、創業・ベンチャーへの代表的な支援として、実験に適したラボタイプの入居スペースを賃貸し、研究開発での大学等とのつなぎ役、事業化への経営支援等を伴走する常設のインキュベーション・マネージャーを配置した支援施設を提供するインキュベーション事業を行っている。また株式公開や事業提携を目指すベンチャーや将来の地域中核企業を目指すベンチャー等に、専門家が短期間で事業戦略構築から事業計画策定まで伴走支援する成長加速化のアクセラレーション事業(FASTAR)も行っている。

 これらの事業を有効に活用して成果を上げているJAPAN STAR、スペース・バイオ・ラボラトリーズの2社に、スタートアップとして会社を立ち上げるまでの苦労や、創業を成功に導くためのポイントなどについて発表していただく。

 中小機構では2021年3月1日にジャパン・ベンチャー・アワードという革新的かつ潜在成長力の高い事業や、社会的課題解決に資する事業を行う志の高いベンチャー企業の経営者をたたえる表彰イベントの開催を予定している。

高水質・高機能の シャワーヘッド

JAPAN STAR 代表取締役 池田 博毅 氏

 製造業の集積地・東大阪で育ち、家業の金型工場で技術・経営を学んだ後、世界に安全な水を提供できるメーカーになることを決意して2008年に独立。昨年まで研究開発の支援が受けられるインキュベーション施設クリエイション・コア東大阪を拠点にしていた。

 11年にインドで開催されたエコプロダクツに参加した際、ノイダというまちの水を見てほしいと依頼された。子供たちは元気がなく、水の中には細菌だけでなくヒ素が入っていたことに驚かされた。帰国後は物質・科学研究機構と連携してヒ素を吸着する技術を研究。

 マイクロバブルのコア技術を完成させ、シャワーヘッド「華」を発売したが、すぐには売れなかった。その後、中小機構や銀行の支援により商品の改良・改善を進めた。ここで学んだのは信用を得るには日々の忍耐が必要ということ。

 15年にはシャワーヘッド「ナノフェミラス」が誕生。さらに技術・商品の高機能化を進め、世界の水質環境の改善に取り組んでいきたい。

脳卒中患者の復帰 最新技術で支援を

スペース・バイオ・ ラボラトリーズ 代表取締役 河原 裕美 氏

取締役 弓削 類 氏

 当社は広島大学医学部発のベンチャーで、再生医療で使う細胞の培養からリハビリまで一貫したシステムで再生医療のトータルサービスの提供を目指す。特に力を入れているのは、脳卒中患者の早期社会復帰のための重力制御装置「グラビテ」を使った幹細胞培養の研究・技術。

 移植細胞の質の向上、コスト低減などにつながると考えている。

 リハビリテーション支援事業では歩行支援ロボット「リゲイト」を早稲田大学と共に開発。脳卒中によりつま先が上がらない状況になった患者のために足関節のリハビリをサポートする製品だ。約600症例の実績がある。

 脳卒中完治システム事業では、再生医療とリハビリの質を上げてトータルソリューションを提供、将来的にはスマートメディカルシティーの実現を目指したい。

■パネルディスカション ブルーカーボンが実現する地方創生
●パネリスト
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)理事長 海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ長 桑江 朝比呂 氏
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合理事 笹川平和財団海洋政策研究所主任研究員 渡邉 敦 氏
カーボンフリーコンサルティング国内事業部長 横浜グリーン購入ネットワーク事務局長 池田 陸郎 氏
大阪府阪南市長 水野 謙二 氏
横浜市温暖化対策統括本部 プロジェクト推進課担当係長 村井 佑貴 氏
横浜市スポーツ協会トライアスロン推進課担当課長 (世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会事務局総務部長/メディア広報部長) 谷口 郁美 氏
岡山県備前市日生町漁業協同組合専務理事 天倉 辰己 氏
●コーディネーター
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合理事 神戸大学客員教授 信時 正人 氏

海藻の力を活用し 温暖化ガスを削減

 信時 ブルーカーボンは国連環境計画が命名した。

 桑江 大気中のCO2が海底や水中生物に吸収・貯蔵されることを言う。マングローブや藻場は吸収率が高く、温暖化対策に果たす役割が大きい。防波堤に藻場を作る取り組みもある。ジャパンブルーエコノミー技術研究組合では官民の橋渡しをしたい。

 水野 阪南市では海草アマモの保全・再生活動を市民を巻き込んで展開。全国アマモサミット開催やG20大阪サミットでの子供たちのアマモ再生活動の報告が評価された。大阪湾再生に貢献できる活動者への支援、好循環制度として阪南モデルを構築したい。

 村井 横浜では2050年までにCO2実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンヨコハマ」を定め、海洋を活用した取り組みを横浜ブルーカーボンと命名した。海洋での省エネ効果をブルーリソースと名づけ温暖化ガスの削減にも着目。カーボンオフセット制度を運用しCO2吸収・削減量を貨幣価値化した。

 谷口 世界トライアスロンシリーズ横浜大会では、参加者から環境協力金を集めワカメ栽培等の藻場育成、地産地消でCO2削減に取り組んでいる。乾燥ワカメを「完走ワカメ」と名づけ参加者全員に配布。満足度向上にもつながっている。

 天倉 日生町の海では激減したアマモの再生活動に取り組む。アマモの回復により名産品のカキの生産量も安定した。アマモサミット備前の開催などブランド力向上に努めている。

 渡邉 地方創生では、ブルーカーボンに関する地域の資源を活用した新たな価値の創出、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合をプラットフォームとした中長期的な取り組みが重要だ。

 池田 カーボンオフセットは欧州の航空会社などがCO2排出量を植林等でオフセットする形で普及している。国内では出雲大社の商店街で資金を集め植樹事業に使う取り組みもある。横浜の大川印刷ではCO2ゼロで印刷業務をするなど、日本でも環境意識が高まっている。

 信時 海から見たまちづくり等を考えるきっかけにしてほしい。

■パネルディスカッション
食マーケティングで実現する地方創生
●パネリスト
バルニバービ代表取締役社長 佐藤 裕久 氏
ミナデイン代表取締役 大久保 伸隆 氏
クラフィット代表取締役社長 山中 哲男 氏
NECキャピタルソリューション執行役員 地域活性化推進部担当 藤田 直人 氏
●コーディネーター
サキコーポレーションファウンダー/ 国家戦略特区諮問会議議員 秋山 咲恵 氏

まちの魅力を再認識 地域密着で考える

 秋山 地方創生と食は相性がいいはずだが、成功事例は多くない。

 山中 飲食業と金融など、業種間の言葉や文化の違いが障壁になっている。そうした人たちの橋渡しが必要だ。

 藤田 地方創生は、地域の事業者や個人が主体で、長期融資は難しく、金利も高くなる。最悪、後継者を探したり、自社で事業を引き取ることも必要だが、そんな金融機関はない。

 大久保 金融機関や地主など多くの人と手を組んで、真剣にそのまちについて考えることが必要。

 佐藤 地方には、それぞれの歴史、文化、産業がある。まちの魅力を再認識し、我々自身が「地元の人」にならないといけない。

 秋山 どうすればうまくいくのか。

 藤田 地域には人材やネットワークが足りない。時として地域外との連携も必要。まず、キックオフできるかどうかがカギになる。

 大久保 地域外の人が出す店は失敗しやすい。しかし、徹底的な地域密着で、自分の地元にするくらいの覚悟でやれば成功する。

 佐藤 どこにでもある、見たことがあるものに人はわくわくしない。

 山中 最初から完璧はない。やりながら見えてくる。地域住民の方たちと一緒に作り上げていく。

 秋山 食で地方創生を目指す人に提言を。

 佐藤 地方創生には、雑多性や変化が必要。ずっと見捨てられてきた土地で繁盛店が誕生した例もある。

 大久保 周りと違う、自分しかできないことをやるといい。

 山中 流行でやるのはだめ。思い入れがないと、地元の人や事業者、生産者にはバレてしまう。

 藤田 食は、キラーコンテンツ。飲食をハブとして様々な施設を展開すべき。

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