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外国人就労の落とし所(3)問題の根源はどこにあるのか? 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 技能実習制度は規制を強化し、不当行為を減らしてきた。ただし、今でも問題が起きているのは確かだ。その原因はどこにあるのか、を考えてみよう。

実習先企業の違反率70.5%だが、通常の臨検の違反率とほぼ同じ

 これまで入管による調査は、あくまでも発覚した不正行為についてのみ取り上げたものだ。一方、労働基準監督署が発表する「技能実習生に対する不当行為」に関するデータは、より現実がわかるものだ。こちらは、労働基準監督署が行った立ち入り検査(臨時検査=臨検)の結果をまとめたものだからだ。この臨検は、入管からの報告、実習生からの相談・通報などに基づいて行われる。

 2017年の臨検は技能実習関連で5966事業所に対して行われた。これは技能実習制度を活用する事業所の約15%に当たり、7事業所に1回と高い割合で実施されている(たとえば一般企業に行われた「労働時間に対する臨検」は400万事業者に対し2.5万事業者に実施されたので、実施比率は0.6%、160事業主に1回という割合)。技能実習制度への監督はかなり濃いことがわかるだろう。ちなみに、18年以降は新たに立ち上がった外国人技能実習生機構が専門特化して対応を行うために、さらにいっそう監督は濃くなる。

 17年の検査では、4226事業所(70.8%)で違反が発覚した。臨検の場合、検査の起点が通報になるケースが多いため、技能実習生とは関係ない一般臨検でも違反発生確率は高い。たとえば、同時期に一般企業に対して行われた労働時間に関する臨検では、違反のあった企業の割合が70.3%とほぼ同じような数字となっている。ことさら技能実習制度のみの問題とはいえないだろう。

技能実習制度ではなく、零細企業全般の問題か?

 こうした違反の中には、技能実習生に対してなされた行為ではなく、企業そのものの問題(企業運営上の法規違反)が多々あった。

 「安全基準の欠格19.7%」、「就業規則の不備9.2%」、「賃金台帳不備8.5%」、「衛生基準の欠格7.9%」などが明らかにそれにあたる。このほか「法令等の周知不足」や「労働条件の不提示」も企業自体の問題といえそうだ。どうしてこのようなことが起きるのか。

 その理由は、技能実習生の受け入れが、極端に小規模事業者に偏るためではないか。家族経営の延長で企業としての体をなしていないがために順法意識が低い。そこで、諸法律違反が起き、同時に、労働者への不当行為も引き起こされた。残業代の不払いや最低賃金違反、過重労働なども日本の零細企業の多くが内在する問題であり、従来から日本人就業者に対しても行われていたことなのではないか。それが、技能実習制度を利用したがために明るみに出たと考えるのが妥当といえるだろう。

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