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外国人就労の落とし所(2)「ブラック問題」の真相探る 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 これまで技能実習制度が26年の間に規制を強化し、問題は年々減ってきたことを指摘した。ただ、それでも昨今の国会論戦では、「年間失踪者7000人」「過去8年で174人が死亡」などと、衝撃的な数字が飛び出した。その実相を探りながら、本当の問題は何なのかを考えていく。

ブラック事業者を通報できるよう、相談体制を拡充させた

 「技能実習生の失踪7000人 駆け込み寺、元難民が奔走」。日本経済新聞2018年8月5日の朝刊の見出しだ。記事内容は、罵倒や叱責、最低賃金違反、長時間労働などのブラックな就労環境があり、実習生の失踪が後を絶たないというものだった。

 これまで書いた通り、2017年法改正により外国人技能実習生機構が誕生し、公的機関として実習先や監理団体の取り締まりを強化している。ここには電話とメール、来社で母国語相談を行っている。監理団体・実習先への取り締まりも強化しており、実習生からの通報に基づき随時、臨時検査も行う。さらには、緊急避難先としての宿泊所も用意しており、通報した実習生に不利益が及ばないよう、実習先企業の変更まで行っている。

 にも拘わらず、なぜ失踪者が出てしまうのか。

 理由はいくつか考えられる。

 まず、こうした体制が整ったのは2017年4月のことであり、それから日が浅く、まだ周知が徹底していないことがあげられるだろう。

 2つ目は、実習先の監視がきつく、通報ができないという可能性が感がられる。

 そして3つ目が、通信・連絡手段の不自由。この点を考え、実習生の通信手段確保を訴えた。あとは、現在全国13カ所の相談拠点をさらに拡充させて、少なくとも同県内には一つ以上の窓口を確保できるようにすることなどが必要だろう。

 ただし、冒頭の日経新聞記事を読むと、実習機構の相談窓口が機能していないことがわかる。同記事では、過酷な実習先から逃亡した技能実習生がインタビューを受けている。山形の実習先から、福島県郡山の駅から車で30分かかる場所にあるNPOに駆け込んだという。その実習生はなぜ、技能実習機構の相談窓口に相談・通報をしなかったのか。

 周知不足もしくは、通報内容が実習先へ筒抜けとなるなどの恐怖を感じたためか。このあたりは改善策を考える余地がある。

ブローカーが高給で不法就労させている

 一方で、取材中に全く異なる失踪理由も耳にした。それは、一部ブローカーが、実習に高給な単発求人に紹介して逃亡をそそのかしているという話だ。これまで書いた通り、技能実習制度を活用すると、企業は思いのほか出費がかさむ。渡航前の面接、就労資格取得費、渡航費、社会保険料、入国後教育、監理団体加入費、監理団体への業務委託費、そして帰国費用の積み立て……。こうしたすべてを合わせてならすと1年あたり100万円を超える出費となる。関係者は言う。

 「だから、そういうのをなしで、もぐりで実習生を使えば、もっと高給を払えます。最低賃金の2倍以上を出す農家などもありますよ。そういうところは、農繁期だけ雇うから、いくら高く出したって、期間が短くて大した出費になりません」

 失踪理由の67%を占める「より高い賃金を求めて」の実情は、このあたりも勘案する必要があるのではないか。

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