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外国人就労の落とし所(1)外国人技能実習制度はそんなに悪いか? 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 ちなみに、こうした事項に関しては監理団体と外国人技能実習機構による定期視察・定期検査時の確認項目となり、違反が発覚した場合は、技能実習の停止・罰金/懲役が課される。

定期確認・定期検査の義務化。母国語による通報窓口の設置

 監理団体についても規定は細かい。

(1)3カ月に一回以上の頻度で、技能実習先企業の実地確認(宿泊施設含む)。その際に設備や帳簿類の閲覧を行い、実習責任者および指導員から報告を受けること。

(2)3カ月に一度以上の頻度で、管理団体に所属する実習生の1/4以上と面談を行うこと。

 そしてこの監理団体に関しては外国人技能実習機構監理団体には1年に一度、実習先企業には3年に一度、実地検査を行うことになっている。この外国人技能実習機構は2017年の法改正で設置された、技能実習に関する管理監督のための公的機関であり、強制捜査権を持っている。同機関には法務省の入国管理警備員や厚労省の労働基準監督官の現役スタッフなどが330人も集まっている。その数と実習先企業数(4万企業)との比率で考えると、通常の労基署(約3500人の労働基準監督官で400万事業者)よりも格段に濃い管理体制を敷いているといえるだろう。

 同機構は、前述の定期検査のほかに以下のような場合も臨時検査(臨検)を行う。

(1)労基署・地方入管局からの通報。

(2)実習生からの相談や申告。そのために、フリーダイヤルとメールにより母国語で対応している。また、地方支所(13か所)にも相談窓口を設けこちら電話だけでなく来所でも対応。

 こうした相談窓口・相談方法については、入国後に行う事前研修の中で実習生に教え、また、技能検定案内のメールなどでも広報している。

 後述の「違反事件」の多くは、通報をきっかけにした臨検で発覚したケースが多い。

 ただ、こうした相談体制でもまだ違反事件があとを絶たない。対策として急ぐべきは、実習生の連絡手段の確保であり、実習先・監理団体への共用パソコンの設置義務、もしくは実習生への携帯電話貸与などが必要と思われる。

違反があった場合、認可取り消し・実習先変更も

 こうした検査体制により実習先企業と監理団体は厳しくチェックされる。違反や欠陥があった場合はマイナス評価が課され、その累積により、実習停止(企業)、認可取り消し(監理団体)となる。一方、優良点を重ねれば、受入数の倍増(従業員の5%→10%)、受け入れ機関の延長(3→5年)が認められる。

 ちなみに、実習先企業にて技能実習生に対して違反行為が発覚した場合、実習生は監理団体・外国人技能実習機構の差配により、実習先企業を変更が行われる。技能実習生には自主的な実習先変更が認められずそのため、「転職の自由が無い人権侵害的状況」と批判されることが多い。そうした状態を打破するためにも、相談→実習企業の変更という対応をより強化していくことが望まれる。

二国間取り決めで、違法ブローカーは激減

 さて、最後にもう一つ、近年大きく改善されたポイントを書いておく。それが「二国間取り決め」だ。

 過去に、実習生から不合理な保証金や違約金を取るブローカーが問題になってきた。ただ、それは送り出し国内で行われるために、日本政府としてはなかなか対応ができなかった。2010年の法改正では、日本国内で受け入れる監理団体において、そうした違法行為がないか、確認をすることでとどまっていた。2017年に「二国間取り決め」を作成し、新たに各国とそれを締結していく方向に変えた。これにより、ようやく「ブローカー(未認可団体)」の排除が可能となり、認可期間にも保証金や違約金の詐取禁止が強化できるようになった。2018年1月末現在、受け入れ15カ国のうち、12カ国とこの取り決めを結んでいる。

 この取り決めをさらに強化し、違反件数の発覚などにより、該当団体だけでなく、その国からの受け入れを前面停止すること、さらには韓国のように実習生の送り出しは公的な機関しかできないようにすることも検討すべきだろう。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

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