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外国人就労の落とし所(1)外国人技能実習制度はそんなに悪いか? 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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社会保険の例外規定が問題の根源となる

 続いて、実習生の社会保険を見ていこう。

 現在、日本では原則、社会保険への加入は義務化されている。例外になる事業者は、以下の通りだ。

<労災保険>(法人は例外なく必加入)
・農業・漁業/危険作業が少ない5人未満の個人事業
・林業/常用雇用者がおらず、年間延べ労働者数が300人未満の個人事業

<雇用保険>(法人は例外なく必加入)
・農業・林業・畜産・漁業/5人未満の個人事業

<健康保険・厚生年金>(法人は例外なく必加入)
・従業員5人未満の個人事業
・従業員5人以上でも下記の個人事業は加入義務がない
※農林水産業・クリーニング(技能実習制度あり)
※理美容・銭湯・映画・娯楽・法律・税理士・飲食業・旅館(技能実習制度なし)

 技能実習生については、労災保険は例外なく全事業所必加入と厳しくなっている(その他は原則通り)。技能実習生を受け入れる企業は監理団体や技能実習生機構を通してチェックを受けるため、法人であればこの原則にそって、社会保険逃れは難しい。

 しかし、個人事業であれば、上記の例外規定通りで、加入は任意となるケースがある。家族経営の小規模事業者で、社会保険の非加入が多くなる素地がここにある。こうした点をカバーするために、健康保険や厚生年金に加入できない場合、国民健康保険や国民年金への加入を義務付けているが、元来、家族経営であったため従業員の福利厚生への配慮を怠るケースがあり、無保険者があとをたたない。

 技能実習生や特定技能資格で外国人を雇う事業主には、社会保険すべてに必加入という適用の厳格化があるべきと思われる。

拠出した年金は母国で活用か一時金にて清算

 年金については、(1)社会保障協定を結んでいる国の場合、日本での拠出分を母国の年金に合算が可能。(2)非協定国の場合は、脱退一時金として受け取りが可能。国民年金であれば支払額の約半分、厚生年金であれば自己負担分(企業負担分は除く)相当額が受給可能となっている。ただ、この点でも国民年金であれば拠出分全額、厚生年金なら企業負担分まで受給できるようにすべきという意見はある。この拡充により、きちんと帰国するインセンティブが生まれるはずだ。

 このほかに損害賠償や医療・死亡保険をセットにした、外国人技能実習生総合保険を安価(月額1000円程度)で用意もしている。健康保険の自己負担分の死亡・後遺症・損害賠償・死亡/危篤時の救援者費用(家族の呼び寄せ・滞在費)など広く補償される。

労働基準法にも適用除外があり、それに慣れた事業者が問題

 実は、農林水産業に関しては、労働法41条により労働時間・休憩・休日・残業代割り増しの適用が除外されている。農繁期や大漁時に、作業を止めることができないからだ。こうした環境下で実習生を受け入れることは危険なため、技能実習については、通常の事業同様に労働時間規制が適用されることになっている。

 しかし、長らくこうした事業を営んできた人たちには、労働時間規制に関して慣れていないことが多い。技能実習生に対し、割り増し未払いや過重労働などの問題が多発する一因はここにもある。

生活全般について、細かな管理基準がある

 続いて実習先企業についてみてみよう。

 こちらは過去に起こった実習生に対する不当行為を、その後の規制強化でほとんど禁止事項として明文化し、しかも罰則規定も通常の労働法よりも厳しく設定してある。

 旅券・携帯・通帳の取り上げ・暴力を伴う業務指導・監理団体の運営費用の徴収などの禁止。

 食事・寮費については賃金から控除する場合は労働基準法に則った労使協定の締結が必要であり、控除額は実費を超えてはならない、と規定されている。もちろん最低賃金は遵守し、同等の仕事をする日本人並みの給与の支払いも明記。

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