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外国人就労の落とし所(1)外国人技能実習制度はそんなに悪いか? 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 前回まで「必然か拙速か、外国人の国内就労」と題して3回掲載した。今回からは続編として「外国人就労の落とし所」と題し、5回にわたって解説していこう。

けっこう厳しく管理されている技能実習制度

 外国人就労の公的な仕組みといえば、「外国人技能実習制度」が頭に浮かぶ人は多いだろう。この仕組みは、本音はともあれ、途上国の実習生に日本で技能を教え、それを母国に持ち帰ってもらうという、国際貢献事業を設立の趣旨としていた。

 ところが、この制度下で実習生の事故や虐待、失踪などが起こり、非難が渦巻くことになった。

 ただ、制度自体も、発覚した問題に対応して、進化・厳格化を重ねてきた経緯がある。そして、26年間に及ぶ制度運用により学ぶべき教訓も多々蓄積した。結果、この制度を使用する企業からは、「これほど厳しい仕組みはない」と不満の声が漏れる。

 こうした点について、改めて振り返り今後に生かす必要があるだろう。

 頭ごなしに「技能実習制度を悪い」というのはやめて、しっかり点検・再評価することにしたい。

技能実習生はR/Dを交わした15カ国からしか受け入れられない

 最初に、技能実習制度のしくみについて簡単に書いておく。この仕組みは2種類に大別される。

(1)企業単独型/現地法人や取引先の従業員を受け入れる。
(2)団体監理型/事業組合や商工会などの非営利組織が技能実習生を受け入れ、傘下の企業にて実習を行う。

 企業単独型の受入数は全体の3%程度と小さく、比較的規模の大きい労働条件が整った企業が受け入れる場合が多いため、問題も少なくなっている。ここでは(2)の団体管理型について、詳しく書くことにする。

 まず、この制度ではどこの国からでも外国人実習生を受け入れられるものではない。旧技能実習法では、日本(正確にはJITCO/公益財団法人国際研究協力機構)と討議議事録(R/D:Record of Discussions)という文書を取り交わした国のみが送り出し可能であり、その数は15カ国にとどまった。

 ただし、該当国にある団体であれば、政府から認可を受けていない場合でも、実習生の送り出しができた。そのため、優良ではない団体が、実習希望者から保証金や違約金を徴収するケースがはびこっていた。2017年11月の法改正により、国の認定を受けない団体からは、送り出しができないようになる。

事前講習は320時間。初年度付帯費用は100万円超

 次に、日本側の受け入れ体制について書くことにする。団体管理側で受け入れた場合、まずは受け入れ団体において実習期間の1/6(概ね2カ月/320時間)以上の集合研修が義務付けられている。ただし、送り出し国ですでに1/12(概ね1カ月/160時間)以上の研修を受けた場合は、日本での事前講習は既定の半分(概ね1カ月/160時間)の講習ですむ。 講習内容は、(1)日本語、(2)生活専門知識、(3)入管と労働に関する法や保護、などとなる。

 講習中の宿舎は無償で監理団体または実習受け入れ企業が確保しなければならない。この間、実習生には「講習手当」が支払われる。この講習手当から講習費・宿泊費などを実習生に負担させることは厳に禁止されている。

 こうした実習費は、実習生受け入れ企業がすべて支払う。企業としては初年度12カ月のうちの2カ月も就労させることができず、その間の講習費・手当などを支払うことになり、負担感が強い。これらの点に関しては実施できない場合は即認可取りけしとなるため、違反団体・企業はほとんどない。代わりに、「技能実習生を雇うと、賃金とは別に、経費が同じくらいかかる」とぼやく企業に多々出会った。さらにこのほかに、実習生の渡航費(旅費や在留資格申請費等)、企業側が現地で面接を行う場合の旅費などもかかる。

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