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外国人就労の落とし所(5)一時的労働力と移民の軟着陸 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 こうすることで、厚い支援がなされる一方で、外国人雇用にはそれなりの出費が伴うことで、日本人の雇用条件が悪化することも防げるだろう。

 この基金の中から、帰国者に退職一時金を支払うことを更に提唱したい。5年満了者ならこれだけで75万~100万円程度になるから、先ほどの脱退一時金に加えれば、帰国インセンティブはさらに増す。

技能者から専門人材へ。専門・短大に進める道を

 さて最後に、一連の外国人受け入れは、結局「一時的労働力」なのか「移民」なのか、という問題に結論を出しておきたい。

 前述した外国人就労の流れの一つ「留学→就職→永住」は明らかに移民だ。大卒高度人材の定住化という形でこの流れはじきに年間3万人に達する。現在の日本人年間出生数が95万人程度だから、これからは、定住人口増要因の3%程度は外国人「移民」になっていく。

 一方、「技能実習→特定技能1号」は一時的労働力となる。ここから「特定技能2号」移行者が生まれると移民策となるのだが、この道はとても細くなるだろう(一足先に同様の永住ルートを韓国は設けたが、その移行者はたった700名足らずだ)。

 こうした状態だと、多文化の共存とは言えず、結局、使い捨て労働と批判が高まることになる。そこでここにも一計を案じたい。

 技能実習3年+特定技能5年で8年在留した外国人に短大や高専・専門学校へと進む道筋を用意するのだ。そうすると、まず、在学中の継職が可能となる。そして、10年在留うち5年就労で永住権の基礎要件は満たす。このルートで永住権が認められない場合は、高等教育機関(短大や高専は国際標準の分類ではそうなる)卒ということで、専門的・技術的分野の就労資格が取得を見込める。

 8年も日本で問題なく働き、そのうえ日本の高等教育も修了するというハードルを越えた人たちなら、多くの日本人が温かく受け入れるのではないか?

基金と教育訓練給付金の活用で、ほぼ無料にて高等教育修了

 ちなみに、学費に関しては、先ほどの「帰国インセンティブ」にあてた基金の75万~100万円をあて、不足分は雇用保険加入者が対象となる「教育訓練給付金」で補い、さらに学校側の留学生減免制度を活用する。こうすることで、本当に少額の出費で高等教育機関の学位が取れる。これは、母国ではありえない手厚いサービスであり、大いに日本への好感度を高めるだろう。

 シラバスは3年程度の修学年限とし、(1)技能、(2)マネジメント力、(3)後輩指導法、を学ぶ。長期休暇中は実習単位として母国での後輩(来日希望者)を教育する。これで技能実習制度の「母国への技能伝承」義務をも全うできる。

 これにより廃校の危機にある短大・専門学校も救えることになるだろう。

 こんな形で、将来的には、人口増要因として年当たり(1)出生90万人、(2)留学→就職→定住5万人、(3)技能実習→特定技能→高専・短大5万人、という形で自然増と社会増を合わせて年間100万人キープという絵が描けそうだ。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

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