ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

USJマーケターが語る投資家の究極の目的 USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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 これまで、私たちユニバーサル・スタジオ・ジャパンが価値を創造・伝達する上で重視する4Cについて説明してきました。Customer(顧客)、 Competitor(競合)、Company(自社)、 Challenge(挑戦)という4つのCです。今回は、少し切り口を変えて、マーケターであると同時に個人投資家でもある私が、何を基準にして投資判断しているのかを説明していきます。投資家の判断プロセスはマーケターの視点と類似性が多く、より良いマーケターになるために参考になるからです。

投資家の究極の目的は、企業を通じて社会に価値を提供すること

 企業が価値を創造・伝達するために必要な資金は、稼いだ利益から賄うこともありますが、より大きな価値を提供するためには追加で資金を調達する必要があります。代表的な資金調達方法は、株券や債券を発行して調達する直接金融と、金融機関から融資を受ける間接金融の2つです。直接金融で資金を拠出する側を投資家と呼びますが、投資家がどんな視点で投資判断するのかを知ることはとても重要です。一義的には、より大きな価値を創造・伝達するために欠かせない資金を調達するためです。

 そもそも投資家は何を目的に投資をしているのでしょうか。株や債券の売却益や配当益などの利益を目指していますが、投資家としての私の経験からお伝えすると、良い投資家はここに最終目的を設定しません。投資家を一般の企業に置き換えるとわかりやすくなります。企業も事業を通じて利益を目指しますが、これはあくまで市場に価値を提供した結果です。企業の最終目的としてあるべき姿は、事業を通じて市場により大きな価値を提供し、より豊かな社会に貢献することなのです。ここに目的を置かない企業は、消費者や顧客が抱えている課題から少しずつ離れていくことになるので、最終的には解決策としての商品も売れなくなります。

 投資家にとっての事業は投資ですから、投資家の最終目的は、投資する企業を通じて社会に価値を提供することになります。投資家が企業に利益至上主義を促すと、前述の通り、結果的にその企業の商品は売れなくなり、投資家も利益を得ることができなくなるのです。

企業の将来に「ワクワク」できるかが最も大切

 私は、個人投資家として株式投資を20年以上しています。個人の全資産の大半を株式投資に拠出しています。さまざまな成功と失敗を経て、社会により大きな価値を提供していく企業の見極めが一定の確率でできるようになりました。10年間で投資元本を約60倍に増加していますが、これは私が投資した各企業が、社会により大きな価値を提供してきた結果、10年前と比べて平均で約60倍の企業価値になってくれたからです。こうした私の経験も踏まえ、投資家の判断プロセスについて説明していきます。

 私が投資判断を行う上で最も重視するのは、企業の将来に「ワクワク」できるかです。この「ワクワク」は、企業がより大きな価値を社会に提供していくストーリーを、私の中で明確に描けたときに生じる気持ちです。

 前回の連載で述べましたが、企業が社会に提供する価値の大きさは、「ノウハウ」と「挑戦」の掛け算で決まります。私が投資対象の企業を検討する上でまず初めに行うのが、企業の「強み」(競合他社より優れたノウハウ)を活用して、消費者や顧客が抱えている課題を解決するために挑戦しているのかです。

 これを見極めるために、まず企業の過去の業績を見ていきます。強みを発揮して消費者や顧客の課題解決にむけて挑戦している企業は、業績が拡大していることが大半だからです。また、過去から成長してきている企業は、そうでない企業より今後も成長していく確率が相対的に高いからです。

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