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4月から「有給5日取得」が義務化、気になるポイントは? 弁護士 丸尾拓養

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 2019年4月施行の労基法改正で、年次有給休暇のうち5日は使用者が指定することになりました。使用者に指定が義務付けられ、実際に取得させることが求められると解されています。しかし、36協定の上限規制により労働時間抑制の動きが既に始まり、これに年次有給休暇の取得が加われば、労働力不足がさらに進むことも予想されます。5月と10月の祝日、祝日法による祝日間の祝日化により、祝日を休日と定めている会社では、所定労働日が減ることになります。あらためて年次有給休暇を考えます。

年次有給休暇は労働者の「権利」

 「年次有給休暇は労働者の権利である」ということに疑念を抱く人は少ないでしょう。たしかに労基法39条に関する最高裁判所の解釈では、法定の要件をみたせば年次有給休暇の権利が労働者に生じます。そして、労働者による時季指定だけで所定労働日が休日に転じます。年休権と時季指定権の2つを区分して解します。

 では、なぜ年次有給休暇は権利として認められるのでしょうか。「権利」であると当然に考えていると戸惑います。労基法では1週1休が求められます。実際には1週2休の会社も増加しました。さらに祝日を休日とし、夏季休業、年末年始休業がある会社も少なくありません。一方、所定労働日に欠勤したときに「ノーワーク・ノーペイ」になるとしても、ただちに解雇が有効となるわけではありません。諸外国に比べて祝日が多いといわれる日本において、欠勤ではなく年次有給休暇が「有給」で認められる理由は何なのでしょう。

 書物を読めば、ILO(国際労働機関)の勧告にある「休息、娯楽及び能力の啓発のための機会の確保」が紹介されています。勧告の英文では、“Holidays with Pay”について、“to secure to employed persons opportunities for rest, recreation and the development of their faculties”となっています。労働と対立する「余暇」や「遊び」を思い起こします。「働き方改革実行計画」では、「意欲と能力ある労働者の自己実現の支援」の項の中に、「年次有給休暇の確実な取得などの長時間労働抑制策」が位置付けられています。「意欲と能力ある」という一節はやや苦手です。

 上司や同僚が就労しているときに年次有給休暇で休むことは、ちょっと愉快な気がします。利用目的は自由ですから、愉快ではないことに年次有給休暇を用いることもあります。1973年(昭和48年)の最高裁判決は、「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である」としました。

 日本では年次有給休暇の取得率が低いとされます。しかし、これはすべての会社に当てはまるものではありません。外資系の企業などではかなり以前から、年次有給休暇の取得率が高い状況が見られました。

 年次有給休暇を「とりにくい」「とれない」という声もあります。たしかにそれも事実なのでしょう。時季変更権が認められ難い理由とされる人員配置の実情とともに、個々の労働者の働き方の効率性も影響しているのでしょう。これを「企業文化や風土」というのは容易です。しかし、解法の探求にはつながりません。

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