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中国の天下は続かない(下)日本人が抱く幻想、「超高給」は例外的 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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「いやなら辞める」「合わなきゃクビ」。人事管理は市場任せ

 ちなみに、職務や勤務地をあらかじめ限定して雇用契約を結ぶ中国では、会社主導の人事異動などは原則ない。だから、上司や顧客と反りが合わないとき、会社主導の異動によってその悪い組み合わせを解消することが難しい。職務限定雇用の本家である欧米では、そうしたミスマッチ対策として、社内公募などを重用しているのに、中国ではそれさえ少ない。

 だとすると、顧客や上司と反りが合わないとき、中国ではどうするのか?

 答えは、きわめて明快だ。「そうした場合は辞めて次の会社を探せばいい」。

 昨夏の取材でインタビューした12人の中国人のうち、9人がそう答えた。

 「でも、次の会社でもまた、ミスマッチが起きる可能性はある。そうしたら、1カ月でまたクビになってしまうのではないか」という再質問を投げると、「そうしたらまた辞めればいい」というこれまた単純明快な答え。

 要するに、上司や周囲との反りが合わない場合は「転職で自力救済してくださーい」。地域の顧客と反りが合わない場合も「転職で自力救済してくださーい」。仕事内容が合わない場合は「試用期間でサヨナラしてくださーい」という感じ。

 会社としての人事管理は脆弱で、多くを市場に任せるという、米国もびっくりな市場主義だ。社会主義の中国でそれが行わる何とも皮肉な風景だった。

「高成長+人材不足」という前提条件は早晩崩れる

 中国の場合、成長率が下がったとはいえまだ6%台を維持しているから、ポストは多々生まれる。大学進学率はここ20年で急上昇したため、社会には大卒35歳以上の人材が少ない。そして、毎年700万人もの大学新卒者が社会に供給される。こんな幸せな関係だから、だから、上を目指す人も、首になった人も、すぐ仕事は見つかる。こんな歴史的・経済的背景があるから、自力救済前提の人事管理が成り立つのだろう。

 が、大卒者の数もここから先は急増し、人材層は急速に厚くなっていく。同時に、1978年から始まった一人っ子政策により、猛スピードで少子高齢化が進む。2017年には生産年齢人口(15~64歳の人口)が減少に転じた。総人口も2025年あたりから減少に転じるといわれる。過去の日本を見ればわかる通り、そろそろ経済成長率が鈍化するはずだ。

 「市場任せの人事管理」が成り立つ前提条件は、じきに崩れ去るだろう。

 今のままの中国では、数年先に「人事管理の危機」が訪れるだろう。過剰負債や知的財産管理などとともに、人事管理も中国企業の弱点となっていくのではないか。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

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