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中国の天下は続かない(下)日本人が抱く幻想、「超高給」は例外的 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 仮に、中国で、転職により給与が倍増したという人がいたとしよう。実際は前職でもベアで4割程度上がっていたはずだ。だから転職での昇給は複利だと4割少々だ。もしこの企業に職能等級があったら、等級アップで2割強の昇給ができた。そうすれば、そのまま働いていたのではないか?

 退職された企業は、空席の補充に手間がかかる。また、その企業も、じきに上席のポジションが空く。が、その時、候補人材がいない。こうした不都合が生じるから、日本は職能等級で人材プールを作っているのだ。

 欧米も中国同様にポストで給与は決まる方式だが、辞めてほしくない社員には、タレントパネルや後継指名など手を変え品を変え、引き止めを行う。ポストでの人事管理を主軸にする中国企業の未熟だとしかいえない。

米国も驚く粗い人事管理

 ちなみに、中国の場合、採用されたあと、試用期間中に能力不足や勤怠上の問題が露見した場合、解雇が普通になされるという。対して日本での試用期間は、採用プロセスに何らかの瑕疵があった場合(たとえば履歴書の虚偽記載など)に契約を取り消すためのものであり、任意に解雇などできない。

 試用期間中の解雇が比較的緩いといわれる欧州は、その分、解雇保障や再就職支援も整っている。荒っぽいといわれる米国でも昨今はそこまで簡単に解雇はせず、改善目標(PIPという)を提示し、半年程度の期限を設けて解雇を行う。そう考えると中国の解雇はあまりにも粗っぽいが、それが成り立つための社会的な背景があった。

 まず、高度経済成長は終わったとはいえ、いまだに年率6%を超える経済拡張が続いていること。とりわけ、脱工業化途上で、ホワイトカラー系の求人は増え続けている。だから、企業は求人難で、すぐに次の働き口が見つかるのだ。

 そしてもう1つ、中国では35歳以上のホワイトカラー人材層が極端に薄いという事情がある。すでに触れたことだが大学進学率はここ20年で急激に伸びた。それ以前は大学進学率は1割にも届かず、しかも、進学者の多くが研究者や教育者、政府関連などの職を選んだため、民間企業就職者が本当に少ない。

 こんな社会背景があいまって、そこかしこに若年求人があふれている。結果、解雇されてもすぐまた仕事が見つかる。そこで粗っぽい人事管理が止まないという。

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