ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

USJはどう閑散期を克服したか ユニバーサル・クールジャパン誕生秘話 USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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 「最も行きたいテーマパーク・ランキング国内第1位」(トリップ・アドバイザー調べ、2018年)に選ばれるなど、人々を魅了し続けるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。その秘訣を、USJのマーケティング・ディレクター、秋山哲氏に解説してもらいます。今回は「ユニバーサル・クールジャパン」の誕生秘話です。

「自社の強み」と「市場の機会」の特定が最も重要

 今回は、市場に価値を創造・伝達する上で私たちユニバーサル・スタジオ・ジャパンが重視している4C(顧客<Customer>、競合<Competitor>、自社<Company>、挑戦<Challenge>)のうち、3つめの自社について説明していきます。

 マーケターとしても投資家としても成功するためには、まず自社(企業)の強みの特定が重要になります。 企業の強みとは、「消費者に価値を創造・伝達するための、競合相手より優れているノウハウ」です。こうした強みは、著書『お金からの解放宣言~秘刀の投資法とお金の在りかた~』(かんよう出版)でも述べていますが、価格競争力、販売力、商品開発力、マーケティング力、マネジメント力の領域のいずれかに存在します。

 強みを特定する上で気をつけなくてはいけないのは、自社のノウハウを相対的に優劣化して強みを特定してしまうことです。例えば、売れる商品はなかなか開発できないけれど、原材料を安く調達できるベンダーと独占契約をしていて割安に販売価格を設定できる企業があるとします。自社のノウハウで捉えると、商品開発力より価格競争力が相対的に強くなります。しかし、さらに割安で原材料を仕入れることができたり、より優れた原材料の加工力で同等の商品をさらに安価で製造・提供できたりする企業があるとしたら、自社の価格競争力は強みではなくなります。強みは、あくまで競合相手との相対比較で決まることを留意しておきましょう。

 企業の強みを特定したら、強みを生かせる機会の特定が重要になります。機会とは、「自社の強みを活かして満たされていないニーズを満たせる可能性がある市場」です。これは新たな顧客開拓の場合と、既存顧客の購買頻度の向上の場合に分かれます。

 私たちが現在提供しているシーズナル・イベントの「ユニバーサル・クールジャパン」を例に、強みと機会を特定し、結果として新たな市場を創造したケースを説明していきます。

課題は閑散期の集客

 2013年当時、私たちは450億円の投資とともに「ハリー・ポッター」のエリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を導入し、翌年度の集客を大幅に増加させる計画をしていました。この時期までにマーケティング活動も始めていて、当初計画以上のゲストがUSJへの来場意向を示すなど活動は順調に進んでいました。

 年間集客の大幅な増加が見込める中、私たちはさらなる成長を目指して新たな課題を設定しました。それは、閑散期の集客を底上げするという課題です。

 一般的に旅行・レジャー業界は、気温や天候に業績が連動します。気温の低い冬場は客足が最も減少し、雨の多い梅雨時期が冬場に続き減少します。私たちの集客も同様の傾向にありました。ハリー・ポッターを導入して年間集客が大幅に増加したとしても、この傾向は変わらないと想定しました。1日の収容可能人数にも限界がある中で、私たちはより収容可能人数に余裕のある閑散期に集客を増加させることを試みたのです。

 この課題は非常にチャレンジングでした。そもそも繁忙期と閑散期が存在するのは、旅行やレジャーをしやすい時期とそうでない時期が存在するからです。当時、私たちの繁忙期と閑散期の集客は5倍以上の差になっていました。閑散期に集客するのは、繁忙期に比べ5倍以上難しいということだったのです。

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