新「企業と社員」関係論―人生100年時代に

関西トップ人材、衝撃の移籍 商社からメーカー社長へ 立命館大学教授 西山昭彦

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たった3回しか会わずに指名

 2017年コーポレート担当役員(国内)兼関西支社長となり、この移動が運命に向かうことになる。関西財界の会合に会社を代表して出ていたので、関西各社のトップとは次々に知り合いになる。インパクトがあるので、一度会えば強烈な印象を残す。そのトップの中の一人に、神戸の名門企業アシックスの尾山社長(当時、現会長)がいた。

 2017年秋、何の前ぶれもなく、尾山社長から後任社長の打診を受けた。それまでは財界仲間であり、転職なんて考えたことがなかったので、びっくりしたそうだ。おそらく、経営者として人を見る目を持つ尾山社長は瞬時に廣田さんの実力を見抜いたと思われる。廣田さんは短期間でこの申し出を承諾した。

 「自分は経営のプロでない。しかし、システムを作り組織を回すことはできる。グローバル経営、会社のマネジメント、ガバナンスに長年従事し、その経験とノウハウが活きてくる。加えて、仕事一筋だった自分が、50歳からマラソンをはじめ大阪マラソンではついに4時間を切った。それを支えてくれたのがアシックスのシューズで、人一倍愛着があった」。

 私は学生に「志望動機は、客観的なビジョンと個人的なこだわりを合わせて書くことが大事」と言っているが、廣田さんの動機は理想的ともいえる。実は私も靴はアシックス一筋数十年で、それ以外を履くことはない。特にペダラは現在靴箱に10足以上ある。だから、「一度履いたら辞められないのがアシックスのシューズ」を実感として理解できる。同社がシューズを提供した陸上競技の桐生祥秀選手は日本人初となる100メートル9秒台を実現し、その優位性はプロスポーツでは実証済みである。

経営者として変革へ

 廣田さんは社長になって、矢継ぎ早に方針を打ち出している。とにかくスピードが速いので、社員もびっくりしていると想像できる。

 一例をあげると、これまで組織はメーカー型の機能別(製造、販売など)だったが、それでは経営責任が見えにくいとして、5つの製品カテゴリー別に製販一体の経営体に作り替えた。事業部、商社型といえる。それぞれが経営を行うことになり、社員にも専門プロでなく、経営人材をめざすことが求められる。大改革といえる。それを1年目に実施している。

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