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グーグル・アマゾン・マイクロソフト…テック企業に「モノ言う社員」 編集者・ジャーナリスト 瀧口範子(シリコンバレー在住)

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「戦争テクノロジー」が議論の的

 AIを含めた「戦争テクノロジー」への関わりは今、大きな議論になっている。よく引き合いに出されるのは、第二次世界大戦中のIBMとナチスとの関係だ。ユダヤ人を調査し、効率的に運搬するのにIBMの技術が使われたのだ。

 歴史的に、テクノロジー開発者には社会変革を行なっているという意識の持ち主が多かった。テック企業も世界を変えるという理想主義をモットーにしてきたところが目立つ。ところが今や戦争や人権侵害に触れるビジネスを行なっており、裏切られたと社員は感じているのだろう。彼らは、技術はもはやニュートラルで無害ではないということに目覚めたということだ。

 それに加えて、現在の政治、社会環境も影響しているだろう。17年1月にトランプ政権がスタートした際、経営トップが大統領のアドバイザーに就いたオラクルやIBMでは、抗議して社員が辞職した。ウーバー創業者のトラビス・カラニックCEO(当時)も、社員の抗議で降りた。

女性蔑視や給与格差も問題視

 さらに、ここ数年ブラザー・カルチャーによる女性蔑視問題や、給与格差問題がテック業界で浮上し、ムスリム諸国出身者の入国規制に対する反対運動や#MeToo運動も加わった。社会や政治に対して抗議運動を行うことが頻繁になっているのだが、それが今や企業内にも向けられているわけだ。

 当然、テック人材が売り手市場であることも背景にあるだろう。抗議を咎められて解雇の目にあっても、次の職場はすぐ見つかる。テック社員は雇用主を怖がっていないのだ。

 テックワーカーズ・コアリションのような組織もある。15年に設立された同組織は、テック企業の社員の抗議運動をつなげるハブのような存在となっている。#TechWontBuildIt(そんなものは作らない)というハッシュタグを掲げ、CEOやベンチャーキャピタリストの言いなりにならない、テック・ワーカーのための開発環境を求める。

テック・ワーカーの新しい姿

 抗議運動を通して、社員らは透明性や社員による倫理の監視などを求めている。自分たちが関わる技術がどう使われるのかについて、全貌を把握している社員も限られていると言われ、大規模化したテック企業内で揺り返しが起こっていることが感じられる。

 こうした抗議運動をナイーブだと見る向きも一部にはある。だが、納得がいかなければ雇用主にも盾をつくという、テック・ワーカーの新しい姿が見えてきたことは興味深い。

瀧口範子(たきぐち・のりこ)
フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、国際関係、社会一般に関する記事を幅広く執筆。 著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』、訳書に『人工知能は敵か味方か』『ソフトウェアの達人たち』などがある。上智大学外国学部卒業。1996~98年にフルブライト奨学金を受け、スタンフォード大学コンピュータ・サイエンス学部に客員研究員として在籍(ジャーナリスト・プログラム)。

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