ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

USJ、クリスマス・ショー「天使のくれた奇跡」を終える理由 USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 前回の記事では、2013年当時、日帰り圏のクリスマス市場において、実際にクリスマス・レジャーをしているか否かに関わらず、クリスマスに興味がある層の7割が、クリスマスを通じて「光のある空間に包みこまれて感動したい」というニーズがあったと紹介しました。

価格差を上回る価値創造と伝達

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)ではまず、この7割の感動を求める層(「感動シーカー」)をターゲットに、市場規模を拡大させることにしました。競合市場をセグメンテーションした軸は「価格」と「感動」です。日帰り圏のクリスマス市場における競合は、20カ所以上の施設がありました。

 なかでも神戸の街並みをイリュミネーションで芸術的に装飾した「ルミナリエ」、大きな人口湖に水上イルミネーションを敷き詰め、イリュミネーションでトンネルを作っていたナガシマリゾート(三重県桑名市)の「なばなの里」は、市場シェアが大きく競合として捉えました。

 これらの競合施設は、価格軸では入場料が無料、もしくは私たちより3割以上割安に設定していたのです。私たちの最大のチャレンジは、価格においては圧倒的に不利な状況のなかで、差別化された価値を創造・伝達し、それを価格差以上にすることだったのです。

 感動軸で競合他社を捉えると、「ルミナリエ」、「なばなの里」、それ以外の競合相手まで含めてすべてが「光のある空間に包み込まれたときの感動」を訴求していました。私たちは、「感動シーカー」にとって「光のある空間に包み込まれる感動」は、クリスマス・レジャーが備えているべき当然の要素と捉えました。そして、これを満たした上で大きく差別化した価値の創造・伝達を試みたのです。

 「感動シーカー」のフォーカス・グループ・インタビューや社内マーケター同士の議論を経て、最終的に私たちが開発したのは「自分自身が変わったときの感動」、具体的には「大切な人への愛がより深まったときの感動」です。

 「大切な人への愛がより深まったときの感動」を加えたのは、そのような感動は誰も提供していなかったのはもちろんですが、最大の理由は、消費者も気づいていない心の奥底にある問題(消費者インサイト)にありました。

 私たちが発掘した消費者インサイトは、「大切な人との関係はこのクリスマスが最後かもしれない!」ということ。その解決にはまず、自分自身が相手をより大切に想えるようになるのが重要だと考えたのです。(消費者インサイトについては初回記事を参照)。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。