マーケティング経営の時代

VUCA時代のマーケティング、CMOは「羅針盤」の存在 「マーケティング×マネジメント2018」開催(下)

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 日本経済新聞社が11月27日に開いたセミナー「マーケティング×マネジメント2018」の特別対談では、J―オイルミルズの八馬史尚社長と横河電機の阿部剛士常務執行役員が登壇。チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の役割や、マーケティングの重要性などについて議論した。(コーディネーターは三宅耕二日本経済新聞社執行役員)

(※「出世ナビ」の連載「だからマーケティングは面白い」はこちらからご覧ください)

◇    ◇

――まずご自身の紹介とともに、マーケティングの取り組みについて伺います。

八馬 私は35年前、味の素に入社しました。1998年から5年間はインドネシアに駐在。それまでインドネシアにはなかった唐揚げ粉を開発、販売し、ASEAN全体に広げたことが印象深い仕事でした。その後、米国で新事業の立ち上げを担当しましたが、現地小売りのプレッシャーが厳しかったですね。採算が合わずに一旦撤退し、電子商取引(EC)を立ち上げることにしました。

 帰国してからはロングセラーブランドのポジショニングを見直し、再活性化に取り組みました。特に「クックドゥ」については「本格中華」とうたっていましたが、より日常的なメニューに変えて市場を広げました。

 J―オイルミルズは、味の素製油、ホーネンコーポレーション、吉原製油が統合し、15年が経過しました。会社を1つにまとめることに仕事の軸足を置いています。

阿部 横河電機に入ったのは2年半前です。現在、マーケティング本部を統括しています。横河電機に入る前は、インテルに31年間所属していました。もともとはエンジニアです。なぜマーケティングに興味もったかというと、1991年に「インテル・インサイド」というプログラムを横目で見て、ブランドの力を体感したことがきっかけです。

 横河電機の収益は、ほぼ9割がインダストリアルオートメーションの分野で占めており、一本足打法で40年間やってきました。経営は順調ですが、このままだと将来まずいことになる、という危機感があります。

 VUCA(ボラティリティ、不確実、複雑、曖昧)の時代だと言われます。今の経営者は、「霧の中でどこからボールが飛んでくるか分からないゴールキーパー」のような状況。VUCAの時代を生き抜くには、失敗を経験することが大切でしょう。横河電機でも、どんどん失敗を経験しようとしています。

 環境の変化が指数関数的に急激な時代です。特に注意すべきなのは、水面下に潜ってよく見えない初期の段階。変化が小さいので、経営者は軽視しがちです。突然、潜水艦のように急浮上してきたときには、もう遅いでしょう。いかに小さな変化を逃がさないかが重要なのです。

 当社のマーケティング本部は、通常のマーケティング部門と違います。コストセンターであり、中期計画立案、新規事業開発、R&D、M&A、戦略的投資なども管轄しているのです。なぜこれだけの機能を抱えているのか。それは全部マーケティングアセットだと考えたからです。

 すべてはスピードのためです。一昨年からスクラムを使ったアジャイル開発を採り入れ、世界6カ国で同じプロジェクトを同時に開発しています。それぞれブラックボックスで開発し始めるので特許に抵触する恐れもあります。最初から特許部が開発の中に入って、スクラムという分散型の開発の中でも特許浸食がないように三位一体の開発が必要になってくる。工業デザインもあるのですが、開発力とブランド力を向上する経営スタイルのためです。まだこれからですが、今後、デザインは経営の中核になると思っています。

――改めて、経営に求められるマーケティング視点について教えてください。

八馬 VUCAの時代となり、今までの前提をそのまま使えなくなってきました。従来の前提をどう覆していくか。それを壊していくことが、マーケティングの仕事だと思います。

 昨今は商品がコモディティー化するスピードが速くなっています。コピー品も早く出回ってしまう。そういう時代だからこそ常に最先端であるために、お客さんを見つめ、お客さんの一歩先を行くことが必要です。

 経営に対して求められる要素が多く、二律背反することが平気で起きてしまう。そんな時代にあって、部分最適ではなくて全体最適を果たす機能をどう置くか。会社の中を見渡せば、お客様起点で考えるマーケティング部門が負うというのは自然な流れですね。

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