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海外に学ぶ大学無償化のあり方(下)大学の一部は「就職予備校」に 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 そして、企業に赴き選んだ3職務を2カ月程度ずつ、経験する。

 その際の職務は雑用程度の簡単なものであり、そのレベルであれば1・2年次に学んだ内容や、企業での導入研修などがあるので、比較的スムースに遂行できるという。

 こうして3年の前半が終わり、残りの半年が卒業のための課題研究となる。

 今度は、実習した3つの職務の中から一つを選び、半年かけてそれを研究する。こうして、仕事に関して熟知してくのだ。

3重のセーフティネットで就活も楽勝なドイツ

 就職時期になると、職業大学のシラバスが非常に力を発揮しだす。

 学生たちは以下のように仕事を選べるのだ。

1、まず、最終的に卒業に向けて課題研究を行った「一番熟知した職務」をベースに仕事を探す。
2、それで仕事が見つからなかった場合、企業実習をした3職務の中から仕事を探す。
3、それでもダメな場合、座学とはいえ、1・2年次に実務者から広く職務について教えられているので、その中から探す。

 こうした三段がまえのセーフティーネット構造となっているために、どこかで仕事が決まる。これが、ドイツ若年失業率が低い理由の一つとなっているのは間違いのないところだろう。

 よく、「大学を就職の予備校にしてはいけない」という趣旨の発言が教育関係者から聞かれるが、ドイツまさに「大学が就職予備校化している」といえそうだ。

少数精鋭化してトップエクステンション

 もう一つ、学費無償化の前に日本の大学が変わっておくべき点について触れておく。

 教育無償化により、多種多彩な人材が大学に行くようになれば、その中から優秀な人材を集めて、産業界のトップエリートを養成することも可能になる。要は、幅を広げて、そのことにより、高さも増す、という方向だ。

 たとえば、米国の本格的MBAがそれであり、フランスのグランゼコールなどもそうした類といえるだろう。

 こうしたトップエリート教育の特徴を以下に示しておきたい。

1、少数精鋭。フランスのグランゼコールは1学年500人程度(純粋な内部進学生は300人程度)であり、アメリカのトップ私立校も学年定員は1000~1500人でしかない。対して日本は、東大・京大でも3500人もの学年定員があり、私立に至ってはトップ校の早稲田が約1万人、慶応が約7000人とあまりにもマンモスだ(図表9)。
2、高額授業料。少数精鋭の中で、指導教員を充実させるためには、学費を高く設定しなければならない。たとえばハーバードは学生約5人に対して教員が一人というフォロー体制を敷くが、授業料の年額は500万円を超える。同様にフランスの名門グランゼコールであるエセックの年間学費は350万円強だ。
3、産業界との連携。ハイレベルな教員を招き、指導内容だけでなく、人間性にも触れあいながら、薫陶を受ける。そのためには、産業界から、トップ人材を講師として招く必要がある。そうして、産業界の最先端テーマを授業で扱うことにより理解は進み、覚えた知識の実用性も増すだろう。

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