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海外に学ぶ大学無償化のあり方(上)「誰でも行ける大学」でいいのか 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 なぜ、無料なのに大学進学者が増えないのか? 理由は簡単だ。大学は「無償の公共施設」だからこそ、「行くべき人を絞られる」と考えられているのだ。そう、大学は厳しい審査をパスした「有資格者」しか入学ができない。フランスでいえばバカロレア、ドイツでいえばアビトゥーアなどの高校終了認定がそれだ。

 図表3はフランスのそれがどのようなものか、を示したものだ。

 図表からわかる通りフランスでは、たとえ理系でも、数理のほかに、「第一・第二外国語」「国語」「哲学」「古典(ラテン)」「芸術」が必須となる。ドイツだと州により試験科目は異なるが、一番少ない州でも6教科、多い州だと12教科にもなる。対して、日本の場合、国公立大学でさえ、原則5教科でしかないが、実際には5教科不要の大学3割もある。何より、日本のそれは国公立大進学者以外にはほぼ不要であり、早慶のようなトップ私大でも文系であれば1~3科目で入学が可能だ。一方、独・仏は原則、大学に進む人全員が、この「資格審査」を受けねばならない。

 確かに学費は無料ではあるが、そこにたどり着くのはたやすいものではないとお分かりいただけただろう。

義務教育の間に落第する人が2~3割という欧州先進国の現実

 こうした高卒時の資格審査に加えて、小中学校時からいくつもの関門があり、大学に行ける人の数が多段階で絞られていく。

 まず、仏独とも小学校中盤に教師・親・本人の3者面談があり、将来のコースが宣示される。「お宅の息子さんは学力が芳しくなく、授業態度も悪いから、中学卒業したら高校へはいけない」と、こういわれるのだ。ちなみにドイツでは現在でもこうした指導のもと、中学卒業後に職業訓練の道へと進む人が2割近くも毎年出ている。

 フランスも同様だ。中学になると今度は14歳の時点で、高校(リセ)の選別が行われ、普通リセと職業リセに進める人が成績でわかれる。普通校に入れた人でも、16歳時時点で「普通科」か「技能科」に分けられる。さらに、18歳で、今度は上位1割が大学よりも難しいグランゼコールに進むべき人が認定され、予備級へと進む。こんな形で大学に行くべき人が、本人の意思とは関係なく、他律的に決められていき、成績が悪い人は「職業コース」、超良い人は「グランゼコール」に進み、結果、中上位の一群のみが大学に行く。だから大学進学率はそれほどのびないのだ。

 ちなみに、日本人が聞いたら驚くような数字を一つ上げておく。中学までの義務教育期間中に落第する人の割合だ。独仏はもちろん多くの欧州諸国で約2割なのだ(図表4)。どうだろう。幼年期から確実に「いける人」選抜は始まっていることが端的にわかるのではないか?

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