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海外に学ぶ大学無償化のあり方(上)「誰でも行ける大学」でいいのか 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 昨今、高等教育の無償化は、政治の場面でよく話題に上る。憲法改正論議の中でも、複数の政党がなんらかの形で、教育無償化に触れている。憲法という国の根幹にかかわる問題だから、読者の皆さんもぜひ、真剣に考えてほしいところだ。

「金さえあれば誰でも大学に行ける」。この問題は放置したままでいいのか?

 まず、よほどの金持ち家庭でもない限り、大学の学費は家計を圧迫する。だから、無償化は政治家の人気取りになりそうだが、各種アンケートを見ると、賛成はそれほど多くない(図表1)。無償化すれば、その分、税金が高くなると考える人、もしくは公教育に政府の関与が強まると危惧する人が少なくないからだろう。

 一部賛成という人からも、裕福な家庭にまで無料にすべきではないという声が聞かれる。そんなところから、家計に余裕のない家庭にのみ、給付型の奨学金を用意する、という方向が落としどころとして模索されている。

 ところが、この方式だと、世帯収入や資産を念入りに調べられることになる。受給者にはスティグマ(心の傷)が残ることになるかもしれない。また、収入をごまかして不正に受給されるケースも出るだろう。そこで現実的な運用が危ぶまれることになる。こんな感じで話がなかなか進まないが、本当はここから先が大事な論点なのだ。

 確かに、家庭の貧富の差で大学に行けない人が出るのはおかしい。ただ逆に、金さえ持っていれば「誰でも」大学に行けることも、おかしなことだ。無料化云々の前に、本稿では「大学とはだれが行くべきか」について、欧州を事例に考えていくことにしたい。

「無料だからこそふさわしい人が行く」と考える欧州の合理性

 欧州では大学の学費を無償化もしくは低額にしている国が多い。無償なら大学に進む人が極めて多くなりそうなものだが、現実はどうか。

 図表2は世界各国の大学進学率の比較としてよく使用されるデータだ。

 これで見ると、日本はOECDの中では、やや下位に位置する。とはいえ、大学が無償化(ほぼ無償化含む)されている各国を見ると、アイルランド、ハンガリー、ドイツ、オーストリア、スペインと日本の差は2%以内であり、イタリア、スイス、フランス、トルコ、ギリシャ、ベルギーなどは日本より相当低い。

 加えて言うと日本以外の多くの国は、単に大学入学者数を高校卒業者数で割っただけのものだ。その中には、再入学や留学生なども多数含まれる。こうしたかさ上げがあるのに、多くの無償化国が、日本並みかそれ以下なのだ。つまり、大学無償化をしている欧州各国でも「誰でも彼でも」大学に行けるわけではないとわかるだろう。

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