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ハウス食品のCMが「ジェンダー炎上」の先駆け 治部れんげ

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 「炎上」がきっかけでジェンダー関連のCMが注目される機会が増えている。実のところ炎上現象は今に始まったことではなく、インターネットの発達以前から同じような問題は起きていた。女性の描き方が問題視されたテレビCMや広告と、それらをめぐる社会的な議論を40年前の1975年から概観する。

古くて新しいCMのジェンダー炎上問題 1970~1980年代

 日本において、企業が発信する女性像が問題視された先駆けは、CM「わたし作る人、ボク食べる人」だろう。これは、1975年ハウス食品工業(現・ハウス食品)のインスタントラーメン〈ハウスシャンメン しょうゆ味〉のテレビCMで使われたキャッチコピーだった。男女が並んで椅子に座り、目の前のテーブルにラーメンが置いてある。女性が「わたし作る人」と言うと、男性が「ボク食べる人」と言う。

 50代以上のビジネスパーソンは、リアルタイムで見て覚えている人も多い。

 このCMの問題は「食事を作るのは女性の仕事」であり「男性は出された食事を食べる」という固定的な性別役割分担を肯定的に描いたところにある。現実を見れば、女性も食事をとるから「作る人」だけではない。女性も「作って食べる人」であるにもかかわらず、CMでは「作る人」の部分だけが強調されている。

 また、家事を女性任せにせず男性もやるべき、というジェンダー平等の観点からも、CMには問題があった。現実には個人差があるが「僕も時には作る人」になる。ひとり暮らしの男性や、夫婦共働きの男性、既婚でも妻が病気や不在の時は、男性も料理を作るからだ。CMでは、こうした男性の姿を省略して、女性が用意した食事を「食べるだけの人」という男性の役割が強調される。

「固定的な性別役割分担」の強調が問題となった

 この問題をひとことで表現すると「固定的な性別役割分担の強調」ということになる。「わたし作る人、ボク食べる人」に抗議したのは1975年、1月13日に発足した市民団体「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会(以下、行動する会)」だった。

 行動する会記録集編集委員会によれば、会は、次のような趣旨で設立された。「60 年代終わりに始まったウーマンリブ運動のラディカルな意識変革の提起に共感し、さらに性差別社会の変革を目指して具体的な行動を起こしていきたいと思う女たちの集まり」

 1975年9月30日、行動する会のメンバー7名が東京・日本橋にあるハウス食品工業を訪問した。同年8月末からテレビで流れていた、同社のインスタントラーメンのCM「わたし作る人、ボク食べる人」が男女の役割分業を固定化するもので、中止してほしいと伝えるためである。

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