ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

USJ、「クリスマスの集客」を倍増させた仕掛けとは? USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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消費者インサイトとは、心の奥底に隠れている問題

 マーケターであれば「消費者インサイト」という言葉は聞いたことがあると思いますが、曖昧に感じている方も多いのではないでしょうか。インサイトとは「消費者自身も気づいていない潜在的な問題」です。消費者が顕在的に欲している「ニーズ」と混同してしまうケースも多くありますが、「ニーズ」と「インサイト」は本質的に異なります。時節柄、私たちが提供しているシーズナル・イベントの「ユニバーサル・ワンダー・クリスマス」を例にあげて説明します。

 2013年、私たちのクリスマスは成長を続けていましたが、さらに成長するためには大きな課題がありました。それは、USJのクリスマスに興味がある層は非常に多いものの、その半分程度は来場していなかったのです。私たちは更なる成長のためにここを機会・課題として設定しました。また、2013年は、当時の年間売上の半分を占める投資額を翌年の「ハリー・ポッター・エリア」導入のために費やすことを決めていたので、新たな投資を伴う商品開発はできない状況にありました。つまり私たちは、新商品の開発をせずに売上を大幅拡大させるという非常にチャレンジな課題を設定したのです。

 私たちはまず、USJのクリスマスに興味がある層に対して、クリスマスを通じて求めているものを調査しました。調査では、USJのクリスマスの体験有無にかかわらず一番大きなものは「大切な家族、友人、恋人とよい思い出をつくりたい」という結果でした。これは、消費者も気づいている「ニーズ」です。他方で私たちが最終的に発掘したインサイトは「大切な人との関係はこのクリスマスが最後かもしれない!」でした。この2つには決定的な違いがあります。ニーズとは、消費者が「意識的に欲しているもの」であるのに対して、インサイトは「解決したい無意識の問題」です。満たされていないという点においては共通していますが、深さのレベルが全く異なるのです。

商品購入理由の95%は、消費者もわからない

 そもそも私たちがインサイトを重視しているのは、商品を売るためです。実は消費者も商品を購入している本質的な理由はわからないのです。脳科学的には、人間の思考や行動は、5%の意識と95%の無意識で成り立っているという知見もあります。つまり、商品を購入する理由も95%は消費者も把握していないということです。ゆえに、5%の中にある消費者が認識しているニーズではなく、95%の中にある消費者が認識していないインサイトを消費者の問題として捉え、その解決策としての商品を開発し伝達することが重要になるのです。

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