新「企業と社員」関係論―人生100年時代に

伝説のスーパービジネスマン(上)統括部長→ヒラ→社長→ヒラの人生 立命館大学教授 西山昭彦

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厳しいシニア転職事情

 仕事は続けながら、人材紹介の大手企業数社に登録をした。「収入にはこだわらない」と言っても、「その年では難しいですよ」の回答。業界では知られた存在という自負があったので、「私の名前をインターネットで検索してみて下さい」と言っても、「世の中そんなに甘くはないですよ」と即答された。

 人材紹介会社経由の転職活動がうまく進まない中で、これまでの仕事で接点のあったデュオシステムズ(現・ITbook、東証マザーズ上場、現在は持ち株会社がマザーズ上場)に話をした。残念ながら、業界内での評判は芳しくなく、赤字だ。だが、「ここでなら65歳まで現役」を実現できるという気持ちになれ、転職することに決めた。こうして、社員27,000人の富士電機から50人の新興企業の世界へと飛び込んだ。

会社の立て直しに全力

 伊藤さんが転職先で初めてもらった肩書は「事業部長代理」だが、実質ヒラ社員に近い。給料も三分の一になった。しかも、入社したら、転職前に感じていた以上に会社の経営状況は悪かった。このままでは倒産してしまうという危機感から、顧客の新規開拓に走り回らざるを得なかった。

 富士電機で省庁の文書管理システムを担当していた頃から、役所の文書こそクラウドコンピューティングで管理しなければならないという強い思いがあった伊藤さんは、自治体のクラウドコンピューティング事業(自治体クラウド)に取り組んだ。入社3カ月後には、総務省の自治体クラウド開発実証PMOというプロジェクトの受注に成功した。徐々に「自治体クラウド=伊藤さん」という業界内での評価が確立した。

 東日本大震災で、自治体文書のセキュリティに対する関心はますます高まった。共著の『自治体クラウド』という本はこの分野では日本で最初の出版で、省庁や自治体などが開くセミナーには必ず伊藤さんが講師として招かれた。売り上げもどんどん伸び、60代で飛び込んだ新興企業で断トツの成果をあげることに成功した。<(下)に続く

参考文献:西山昭彦編著『好きなことで70歳まで働こう!』PHP文庫

西山 昭彦(にしやま・あきひこ) 立命館大学教授
一橋大学社会学部卒業後、東京ガス入社。ロンドン大学大学院留学、ハーバード大学大学院修士課程修了。中東経済研究所研究員。アーバンクラブ設立、取締役。法政大学大学院博士後期課程修了、経営学博士。東京女学館大学国際教養学部教授、一橋大学特任教授などを経て18年から立命館大学共通教育推進機構教授。人材育成、企業経営、キャリアデザインを中心に研究し、実践的人材開発の理論を構築。研修・講演は通算1000回を超える。「ビジネスリーダーの生涯キャリア研究」がライフテーマ。著書は計61冊。

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修、就職

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