官民連携と地域連携で実現する地方創生

【パネルディスカッション】“共創”で進める農業活性化

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パネリスト
マイナビ 執行役員 農業活性事業部 事業部長 池本 博則 氏 佐藤 芳治 氏 塚原 敏夫 氏
楽天 インベストメント&インキュベーションカンパニー農業事業部 梅村 周平 氏
コーディネーター
日本総合研究所 創発戦略センター エクスパート/農林漁業成長産業化支援機構 社外取締役 三輪 泰史 氏

共感と信頼関係が活性化の必須要素

 三輪 まずは池本さん、梅村さんから自己紹介を。

 池本 昨年8月に農業情報総合サイト「マイナビ農業」を開設。日本の農業関係人口を増やすことを目的に、クラウドファンディングやオンラインストア、セミナーなどの事業を展開し、生産者、自治体、JAといった様々な立場の人の意見を収集してきた。新たな取り組みとして、自治体や各種団体とのプロジェクトを始めたほか、来年春には農業人口を増やす新企画のリリースを予定している。

 梅村 楽天は昨年4月に契約栽培サービス「Ragri(ラグリ)」を開始した。農家と消費者をIT(情報技術)でつなぐ場と、月額安定収入を実現する新しい農業の形を提供し、次世代農家を育成・支援することが目的だ。消費者は自分で選んだ農家の作物の成長を確認でき、収穫時期には直送で作物が届けられる。また、自社農場で一貫生産するオーガニックカットサラダ事業も行う。規格外野菜を有効活用でき、就農希望者の支援にもつながる。

 三輪 基調講演では上川町の取り組みを聞いたが、地元ではどのような反応があったか。

 塚原 最初は賛否両論がありつつも、上川町の人々に利益をもたらすという確信をもって酒蔵創成プロジェクトを始めた。百パーセント私たちの持ち出しで町に投資し、地元の人を雇用してものづくりを行った。酒蔵で造った日本酒は「町に来ないと飲めない酒」として販路を限定したところ、約200キロメートル離れた札幌から飲食店関係者が買いに来るようになった。そして、だんだん町の人たちとの関係性も変わってきた。外部の人間である自分たちが大きなリスクを取ってこそ、地域に認められるのだと強く感じている。

 佐藤 レストランのプロジェクトについても、当初は様々な反発があった。しかし、プロジェクトを通じて町の作物への付加価値が高まる中で、人々に「この町の農業を広く伝えたい」という思いが醸成されてきたのを感じて、私自身驚いた。

 あらゆるプロジェクトに言えることだが、経済一辺倒の姿勢では住民からの反発が大きい。「一緒に地域の人とやろう」という姿勢で共感を呼ばないと、なかなか発展しないのではないか。行政や議会、各産業、住民らが話し合い、信頼関係を構築することが非常に大事だ。

農業×ビジネスは情報がカギを握る

 三輪 「共創」が本日のテーマだが、共創に向けて企業として取り組んでいることや、今後の展望を教えていただきたい。

 池本 SNS(交流サイト)では、生産法人や農業者が数千人規模でつながり、情報交換している。日本では農業とビジネスがいまだに結び付かない面があるが、そこに情報が関わることで変わると感じている。

 「マイナビ農業」を通じて、まだ経験の浅い生産者一家が、別の都道府県で同じ作物を育てて成功している生産者と知り合い、やりとりが始まった好例もある。私たちが介在することで、人と人をつなぎ新たな関係性が生まれている。今後もつながりを結ぶ事業展開をしたい。

 梅村 「Ragri」では、生産者の方々に伝えたい思いを自由に発信してもらうという方針があり、そこから消費者との対話がどんどん広がっている。料理法や作物の様子を伝えたり、ドローンを使って報告する生産者もいる。今後は生産者と消費者の間に「つなぐ人」を入れて思いを代弁したり、6次産業化を支援して新たな販路を作ったりなど、生産者に合った方策を提供したいと考える。

 塚原 酒蔵創成プロジェクトでは、北海道内で酒米を作る生産者が非常に少なかったため情報が不足していた。生産者同士が「今年はこうだった」などと話し合える場がなかった。私たちが「グローバルGAP(農業生産工程管理)勉強会」を通じて連携の仕組みを作ったことは、道内の生産者が負担なく安心安全の酒米を作る一助となったと自負している。マイナビや楽天のような情報交換の取り組みが一般化すれば、農業を取り巻く状況はかなり変わると思う。

 佐藤 農業はその地域の生産者たちだけで経済が確保されればいいという問題ではない。若い農業者が魅力を感じ、将来に希望を持つためにも、観光業とのコラボレーションなど時代に即した農業展開が必要だ。

 一方で近年、機械化、大型化など、盛んに新時代の農業のあり方が提示されているが、高齢の生産者がITやロボットを取り入れるのは難しい。農業においても多様性が認められてほしい。高齢者が生きがいを持って行う小規模農業に対しても、国や県が支援していくべきだ。

 三輪 共創とは、一つの場にいろいろな人が入り、様々なアクションを起こして全体を動かすことだ。例えるなら、地元の人々が池の水面に石を投げかけ、そこに企業や団体が加わることで増幅される。しかし、その池自体が凍っていては意味がない。多様な人々が動き、かつ跳ね返されないような場づくりが重要だ。ぜひ今日の内容をヒントに、いまいちど地方創生を見つめ直してみてはどうだろうか。

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