未来の働き方を大予測

間違いだらけの新卒採用、「第二新卒と卒業直前」にヒント 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

欧米の「いい話」は一部エリートの厚遇事例。一般的な若者はかなり苦しい入職となる

 連載終盤では欧米の未経験入職の方法に触れた。日本のように組織末端に大量の空席ができない欧米では、未熟練者向けの採用ポストは少ない。職を得るのはいかのような方法に頼ることになる。

(1)エリートトラックでの超優遇採用。
(2)空席の多いブラック的職務での入職。
(3)インターンシップや職業訓練を長期間経て、熟練度をあげて入職。

 日本で欧米型のうらやましい話を聞く場合、たいていそれは、(1)のエリート採用だ。かの国でも上位1%程度の人材の取り扱い方法であり、そんな手法は参考としてはいけない。

 (2)に関しては日本でも同様に、「いつでも何歳でも採用している」ブラック的不人気企業は多々あるから、変わらないだろう。

 (3)のみ日本と欧米(欧州)の大きな違いだが、それは現実、生易しいものではない。連載でふれたフランスの例などでは、長期間低給与で企業内にて雑務を押し付けられ、身分保障もないという「訓練とは名ばかりのブラック労働」となっている。(「ドイツおよび周辺国のデュアルシステムはどうだ?」と訳知りの人は言うだろう。この方式については、そのうちじっくり解説することにする。中身を知れば、騒ぐほどのこともないのがわかる)。

 結局、欧米に参考となるような若年入職システムはない。

 だから結局、日本型の新卒採用をより良き形に改良するしかないことになる。

 そこで、前半の「最適な就活ルール」について、さらに補足する形でこの連載を終えることにしよう。

政治主導で就職ナビ規制をできるのは進次郎氏くらいか

 まず、就活ルールの徹底には、就職ナビ規制が一番効果的だと書いた。そのためには、就職ナビを厚労省の許認可事業にする。この件に関して現実性はあるのか?

 実は、昨年、職業安定法が改正され、規制対象の拡大が可能になった。それまでは主に転職エージェントに関して規制をかけていた条項が、「求人情報提供者」全体に広げられたのだ。就職ナビももちろん「求人情報提供者」だ。つまり法律的素地は整った。

 あとは、衆参両院に諮って詳細条項を設けるか、政令・省令・指針・通達など行政府内での指令にて規制をかけるか、で実現が可能だ。議員間での合意形成が不要な後者が手っ取り早いだろう。

 ただそれでも、実現は難しいと私は思っている。こうした規制拡大に対して現在は政治だけでなく社会全体が後ろ向きだからだ。マスコミなどを中心に、就活ルールの在り方がより騒がれて、就職ナビ規制が盛り上がれば、政治や行政も動き出さざるを得ないだろうが、それでもなかなか動かきはしないと読む。義務的業務が拡大しすぎた厚労省は新たな職務の追加には二の足を踏むだろうし、大学・産業界の調整を一手に引き受けるのも荷が重いからだ。

 そして、ここで掲げたルールはあくまでベターなものであって、完璧ではないから、いくら損をする人もそれなりに出る。少数の反対者でも影響力の強いプレイヤーだと、政治や行政はそれを聞かざるを得ない。たとえば、4大臣指令の就活後ろ倒しさえ無視してきた新経連所属企業の経営者には、現政権に近い人がいる。彼らが反対の声をあげれば動きは止まるだろう。

 そうこう考えると、国民的人気のある政治家で、この分野に関心を抱く人が、大英断をし、規制を整えるしか方法はないように思われる。そう、進次郎氏くらいしか、就職ナビ規制へと政治・行政を動かせないのではないだろうか。

とすると、今回の就活ルール再改定論議も、結局は、その場しのぎの粗いもので終わり、また数年すると産官学で大騒ぎが起こるだけ、とみている。30年もこの領域を見てきて何も変わらなかった諦めにも近い予想だ。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。