現場発で考える新しい働き方

「60歳定年」丸20年、70歳現役時代を迎え考えるべきこと 弁護士 丸尾拓養

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70歳までの雇用への具体的動きが始まった

 70歳までの雇用に向けての法改正の動きが報じられています。高年齢者雇用安定法(「高年法」)改正が予定され、数値目標などの計画策定が事業主に義務付けられるようです。ここでは「高年齢者」という語が用いられています。「高年齢者」の定義は厚生労働省令で55歳以上とされます。同じく「中高年齢者」は45歳以上とされます。

 2017年3月に決定された「働き方実行計画」では、「高齢者の就業促進」について1項が設けられています。そこには、「65 歳以降の継続雇用延長や 65 歳までの定年延長を行う企業への支援を充実し、将来的に継続雇用年齢等の引上げを進めていくための環境整備を行っていく。2020 年度までを集中取組期間と位置づけ、助成措置を強化するとともに、新たに策定した継続雇用延長や定年延長の手法を紹介するマニュアルや好事例集を通じて、企業への働きかけ、相談・援助を行っていく。集中取組期間の終了時点で、継続雇用年齢等の引上げに係る制度の在り方を再検討する。」との一節もあります。

 ここでは、「高年齢者」ではなく「高齢者」という語が用いられています。「働き方実行計画」の本文の中ではその定義はなされていません。65歳から74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と区分することがあります。

 最近の未来投資会議の動きを見ると、「高齢者」の就業促進は社会保障の在り方と強い関連があることがうかがわれます。「女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実」や「多様な女性活躍の推進」といった「女性の活躍しやすい環境整備」というのも、この延長線上にあるのでしょう。「病気の治療と仕事の両立」もこれに関係します。新薬に伴う超高額な医療費の話を聞くと、健康保険組合の在り方も変わらざるを得ないのでしょう。

 たしかに、高齢化が進む中で、高年齢者、そして高齢者が雇用され得る環境を整備することは、国の、そして実際には事業主である企業の責務なのでしょう。しかしながら、それは必ずしも長期雇用の延長によってのみ実現されるものではありません。むしろ、長期雇用の仕組みとは異なる、いわんや正社員と異なる仕組みで実現されるべきなのかもしれません。「高齢正社員」は、労働者にとっても厳しいものがあります。

60歳定年が法定化されたのは20年前である

 高年法は1986年10月に施行されました。それまでは定年を55歳とする企業も少なくありませんでした。1983年に60歳定年とする企業が50%を超え、1986年の法施行で60歳定年が事業主の努力義務となり、1998年4月施行の同法改正で60歳を下回る定年が禁止されました。

 多くの企業は、特に大企業は、これに先立って、60歳定年を導入していました。法律が求める基準を上回る雇用をしてきたのです。高度成長、安定成長、そしていわゆるバブル景気の下では、特に自社の閉ざされたシステムに順応した55歳以上の「高年齢者」である労働者は、或る意味で「即戦力」として、雇用継続が必要とされたのでしょう。しかし、その一方で、55歳での役職定年制や、55歳近辺をピークにしてそれ以降は下がる職能給の賃金カーブなどに、その名残りが垣間見られます。

 1968年の就業規則変更に関する最高裁の大法廷判決には、「新たな停年制の採用のごときについても、それが労働者にとつて不利益な変更といえるかどうかは暫くおき、その理を異にするものではない」との一節があります。「定年」ではなく「停年」という語が用いられています。この事案は、1957年4月になされた「従業員は満50才を以って停年とする。主任以上の職にあるものは満55才を以って停年とする。停年に達したるものは退職とする。」という就業規則変更の効力が争われたものでした。

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