新「企業と社員」関係論―人生100年時代に

「出世」に代わる2つのインセンティブ 立命館大学教授 西山昭彦

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 今回は、ミドル層以降の新たなインセンティブを考える。これまでと異なる2つの方策が浮かんでくる。1つは会社への提案で、それによりこの層が活性化する人事制度である。こちらは実現するには企業による人事制度が必要である。しかし、もう1つは、個人が自分で取り組むことができ、定年が今ほど気にならなくなる道である。

社内インセンティブ機能せず

 前回、企業は社員の働きに対して昇進というインセンティブを提供するが、ピラミッド組織の下では、中間まではポストも相当数提供できるが、そこから上はかなり絞り込まれ、昇進インセンティブが提供できなくなる。その結果、ミドル層以降のモチベーションアップがはかりにくい点を指摘した。

 実態として、社内資格のピークアウト後は、2段階で処遇が急速に低下し、モチベーションが落ちてくる。62歳が「会社という大組織では仕方ないですが、役職定年でヒラ社員になり、定年で非社員になる。この中で、どうやってやる気を出せばいいのでしょうか」という。この声は60代では多数派である。

 社内インセンティブは、昇進と昇給の2大アイテムで成り立っている。役職が上がると給料も上がるというリンクでそれは結びついている。したがって、役職が下がれば給料も下がることになる。ポストを離れてヒラや嘱託となり、給与が低いのはこの式の中では当然である。現行の制度では、社内インセンティブの2大アイテムを失い、その後下降するので、シニアのモチベーションアップがはかれない構造にある。

「役職給料リンク」を解く

 役職に見合った働きをする人を役職定年の例外としてポストで処遇するケースはよく見られる。さらに定年後も、例えば課長のままのケースもあれば、専任課長などで60歳以降もポストにとどまる人がいる。しかし、これを拡大していくと、組織の若返りが遅れる。特にAI革命の時代に若年層の新しい発想やエネルギーを発揮させる必要がある中で、これは組織革新上致命的になりかねない。したがって、あくまで例外にとどまる措置といえる。

 そこで、別の道として、ミドル以降の層に対して「給料の役職リンク」をやめる方法を対案する。その年度の目標管理の中で、目標より相当高い利益をあげた人に、その上回った分の一部を還元する制度を作る。この制度は、常に支給より利益が多いので、対象者が増えれば、会社は得するばかりだ。ポストを奪わないので職場や後輩にも害はない。むしろシニア層の上司である課長は自分のセクションの利益があがるので、この制度を歓迎する。シニア層はスキル、経験が豊富で潜在力を持っているのに、これまでは発揮してもインセンティブがないので、力を出し切れなかった。ここに、企業の「含み益」の源泉がある。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。