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欧州の若者は「薄給でブラックな訓練」に耐えてやっと就職 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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搾取と答えた人43.5%

 実際に、彼らの賃金はどのくらいだったのだろうか。

 2006年当時のデータを見ると、報酬ゼロが52%、続いて当時の月額最低賃金の3割以下が27.6%。ここまででほぼ8割となる。この額を超えると、企業は社会保険料負担が義務化されるので、極力この範囲で賃金を抑えようとしているのだ。つまり、インターン生はそのほとんどが無保険となる。日本ではあれほどお気楽なインターンシップにも学生保険をかけろ!といっている。欧州の現実がよくわかるだろう。

 報酬レベルについての感想は、「搾取」と受け止める人が43.5%であり、とても不十分(21.6%)と合わせてほぼ7割。一方とても良いが2.8%ほどいるが、これは先ほど触れたグランゼコール在籍のエリート予備軍だろう。

 くどいようだが、ほんの一部のエリートが厚遇される階層構造が見て取れるだろう。

デモ、ストライキ……その末、最低賃金の1/3

 こうした状態への不満が爆発し、2005年10月4日、パリでインターン生によるデモが起きた。11月1日にはインターン生の一斉ストライキも起き、その後も継続的な活動で1万5000人の署名が集まり、翌2006年4月13日に現状改善の請願書が首相に提出される。そこから3年半をかけ、インターンシップ改革が進みはしたが、それでも、インターン生の月額報酬は、最低賃金の1/3以上にとどまっている。月額で日本円換算するとフルタイム労働して5万円ほどだ。それを14カ月もこなしながら仕事を覚えないと職にありつけない。

 さて、企業実習ではどのように職業教育がなされるのか。先ほど出てきたインターン生たちの発言からも、計画性や教育性があるというよりも、無茶ぶりと思われる実態があり、教育とはいいがたい内情がよくわかるだろう。

 ちなみに、実習先での訓練内容については、CFA(見習い訓練制度=公的な企業実習)を対象にしたアンケートデータがある。こちらでは、64.2%が職業教育を受けていないと答えている。

 そう、欧州のインターンシップは、企業の雇用調整弁であり、移民よりも安い低賃金労働なのだ。だから企業はインターン生を重用する。こうした現実が日本では全く語らず、ただ単に、日本型は悪く、欧米が羨ましいという印象のみが語られがちだ。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修、就職、就活、就活ルール

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