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欧州の若者は「薄給でブラックな訓練」に耐えてやっと就職 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 彼らは、奨学金付き自社研修(アプロンティサージュ型インターンシップ)として2年次から各社に囲い込まれる。その際の学費はすべて企業の支払った訓練税で充当され、そのほかに、企業は生活費相当の実習手当まで支払う。

 ちなみに、フランスのグランゼコールの学費は年間400万円程度が相場だ。これに実習期間の給与も含めると企業負担はゆうに500万円を超える。そこまでしても採る。それが希少人材の青田買いであり、そしてこれは究極の「内定拘束」にもなる。アプロンティサージュは1~2年にも及ぶのだ。その間、他の会社で企業実習を受けることなどできないのだから、自社への入社確率が高まる。

 エリート予備軍にはここまでの「青田買い」が行われている。「欧米ではインターンシップが普及している」という時に語られる一方の世界は、こんなものなのだ。誰もが平等一律を好む日本で、こんな特権階級的な待遇を上位1%が享受することに、コンセンサスが採れるとはとても思えない。

非正規代用のブラック型インターンシップ

 一方、普通の大学生を企業がインターンシップで迎え入れる理由はまったく別物となる。それは、「偽装雇用」とフランス語で呼ばれている。フランスの若年雇用に詳しい五十畑浩平准教授(名城大学経営学部)はこう説明している。

 「企業研修は、本来の教育活動としての意義が希薄になる、あるいは欠如することで、雇用形態のひとつとして機能することとなる。企業にとってみれば、有期雇用などの非正規雇用に次ぐ不安定雇用のひとつとしてみなされるようになり、労働市場にとってみれば、雇用の調整弁としての機能を果たすことになる」

 欧州の場合、原則としては非正規雇用ができない。そこで、インターンシップが非正規雇用の代替として使われているのだ。フランスの公的資料から、その状況を探ってみよう。

 「私は、ジュネーブにある国連人権高等弁務官事務所で3カ月の研修を受入れた。無報酬であることははっきりしていたが、研修にかかる費用は知る由もなかった。もちろん旅費、滞在費、食費、交通費などすべての費用が自己負担であった。~ジュネーブの物価は高いため、すぐに銀行口座の残金がゼロになった。~この研修は自分にとって有意義なものになるであろう、すぐにいい仕事が見つかるであろうと確信していた私は、研修を継続するため借金をし、継続更新をした。6カ月の研修の末、丁重に感謝された。~現在私は失業状態で、一時的な仕事を掛け持ちしている。専門分野での経験が十分ないため、私の資格の水準にあった職は見つからない」

 「私は、SMIC(最低賃金)の30%分が支給される修了時研修(Bac+5国際貿易専攻)を終えたばかりだ。~研修生がいなければ、その部署は機能しない。プロジェクトリーダーは、あまりにも多くの仕事を抱え、その部下も仕事で手一杯である。研修生は、したがって、アシスタントとプロジェクトリーダーの仕事を引き受けることになる。5カ月の研修で、超過勤務は100時間ぐらい溜まった。ただ6月にカウンターがゼロに戻ったから、少なくとも150時間は超えている。就業時間ですか?それは、8時45分から、18時30分まで。時々、19時15分になる。単純に、研修生には、労働短縮の権利や、ヴァカンスの権利がないからだ。それに、私たちは、アシスタントよりもはるかに重く、プロジェクトリーダーと同等の責任をもたされている」

 「私は、正規ポストを任され、サービスの新規開発に参加していた。そこでは、従業員よりも研修生のほうが多かった。しかし、職務経験を積んでおきたかった」

 「うちの制作会社では、あるケーブルテレビの仕事を 請け負っているが、 15 人の 従業員 に対し私たち研修生は10人いる」

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