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新卒採用を欧米流に改革すると、日本の若者はブラック職場行き? 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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新卒改革論で語られる案は欧米でも全く一般的ではない

 まず、新卒一括採用をやめて、企業はどのような方法で若年者を受け入れるべきか、について、以下のような話が語られる。

(1)新卒時点にとらわれず、卒業後にゆっくりと考えられるようにすべき
(2)大学の早い段階から、インターンシップや企業実習で社会を知るチャンスを豊富に用意して、キャリアをよく理解したうえで仕事を選ぶべき
(3)職務別の雇用形態をとり、「必要なスキル」が明示された形で募集活動が行われるべき。

 この改善策は、たとえば1994年に上梓された『日本の雇用』(島田晴雄著)の中にもすでにその要諦が垣間見られるように、20年以上も言われ続けてきたことなのだ。

 しかし、欧米にもここで言われるような夢のような仕組みはありはしない。まず、向こうは若年未経験採用自体が少ないために(1)などありえない。また職務別採用とは「職務ができる人用」のものなので、未経験者にはとりわけ厳しい。そしてインターンシップは、就業のためのとんでもなくハードボイルドなものだ。

 こうした現実を知らない絵空事が「日本型の改革案」として語られている。

そもそも未経験採用が本当に少ない欧米

 最初に、欧米では、若年未経験者の大量採用がなぜ少ないのかを説明しておこう。

 欧米の場合は、前回話したとおり、やめた人が出たら、そのポストにかなう人を採るのが一般的だ。課長が辞めたら課長を、部長が辞めたら部長を、スペシャリストが辞めたらスペシャリストを採る。限定型雇用の中では、上位にできた空席を、ヨコ・ヨコ・タテ・ヨコとパスして組織末端に寄せることが難しいと説明した通りだ。

 だから、組織末端のポストで求人が起きるのは、そのポジションの人が辞めて欠員ができたときだけになる。だから、エントリーレベルの求人がとても少なくなる。

 対して日本は、無限定雇用のために、どこで欠員が出ても、社内異動と昇進でそれを埋める。そうすると空きポストに異動した人が新たな空きポストとなる。この玉突き連鎖により、空きポストは最終的に組織末端に寄せられていく。だから大量の「エントリーポジション」が生まれる。これが、前回書いた「日本型無限定雇用」特有の人事管理術だ。

 結果、企業は課長が辞めようが部長が辞めようがスペシャリストが辞めようが、結局、新卒一人を採用すればいい、というものすごい楽な人員補充が可能になる。

 そして、大卒者も、どの企業でも組織末端に大量のエントリーポストが空くために、入職が容易というメリットを有することになる。

 お分かりいただけただろうか? そもそも、欧米は「新卒採用がほとんどない」という国柄なのだ。失業率や転職率が高まるのは、そのためだ。

 なので、「卒業後いつでも未経験者を大量に受け入れてくれる」といった夢のような仕組みは欧米にはほぼない。

エリート職か、ブラック職か、職業訓練をするか

 では、欧米では若者はどのような入職方法となるのか?

 それは超優秀層のエリート採用(対象は1%程度だろう)と、それ以外で大きく異なる。

 日本のマスコミやネットで語られる「うらやましい話」はすべて、上位1%のエリート採用の話なのだ。冒頭に引いたファーウェイの高給新卒採用などももちろんそうだ。こうした超レアな事例を掲げて、「こうすべき」というのが、今、よく言われている話なのだ。

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