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なぜ新規事業開発は失敗する? オムロンが出した答え 宮田喜一郎・オムロン代表取締役執行役員専務に聞く

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――超具体的近未来は、どのように描くのですか。

 近未来デザインとは、超具体的に事業のアーキテクチャーを描くことです。建築と同じでマンションやビルを建てるのであれば、どんなマンションやビルにするかの全体像や仕様を決め、ビジネスに落とし込んでいく必要があります。このように、技術や知的財産権、ビジネスモデルの観点でそれぞれ結びついたアーキテクチャーを描く。これを考える人がアーキテクトです。

 実は、創業者は「将来、家庭で測定したデータをもとに健康管理を行うようになる」と予測しましたが、アーキテクチャーまでは描いていませんでした。創業者のアイデアを我々の先輩たちがそしゃくして、生活習慣病にフォーカスし、血圧計や体重体組成計という事業を展開するアーキテクチャーを描いたのです。このように近未来デザインや、それに基づく具体的なアーキテクチャーを描いていくことがIXIの仕事になります。

――新会社のオムロン サイニックエックス(OSX)がバックキャストで近未来デザインを実行する役割を果たすのですね。

 近未来デザインをメインで担うのはOSXですが、IXIでも実行していきますし、フォーキャストがメインとはいえ各事業部門でも近未来デザインを描くことは必要です。ここで重要になるのは、IXIは近未来デザインの取り組みをプラットフォーム化し、形式知として共有する組織だということです。

 オムロンは、これまで新規事業の開発組織を何度も立ち上げて、その度にうまくいかないということを繰り返してきました。これはオムロンだけの話ではなく、多くの企業が同じ課題を抱えていると思います。失敗の理由を考えてみたのですが、大きな理由の1つは「新規事業を考える組織に人材を固定してしまうから」ということに行き着きました。新しい組織に人材を固定してしまうと、新規事業を立ち上げるのはその組織だけの役割だと周囲が勘違いしてしまい、他人事になってしまいます。

 他人事にならないために、今回はプラットフォーム化しました。専任のマネジャーはいますが、実行部隊は事業部門や本社部門から人材を出してもらいます。参加する人たちには、事業部門から具体的な近未来デザインとバックキャストで検討したアーキテクチャーを持ってくることになります。例えば、「ロボットを使って、このような社会的課題を解決したい」という見通しや強い思いがあれば、IXIに持ち込んでもらうわけです。

 そのためにプロジェクトベース型の人材公募の仕組みも新たに整えました。原籍となる部署からは異動せずに、プロジェクトとして参加する仕組みです。各部門の長に聞くと、やはりバリバリと現場を支えている30~40代の中堅社員は自部門の外には出しにくいと話していました。こちらとしては、「そういう人材ではなく、入社3~7年目くらいの面白いことを考えている『変わったやつ』をお願いします」と言っています。

 OSXについては「事業部門では考えつかないような新しい近未来デザインをバックキャストで描け」という使命を課していて、ほとんどが外部の人材で構成されています。だから突拍子もないアイデアが出てくる可能性が高いのです。

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