テクノロジーインパクト2030 Picks

なぜ新規事業開発は失敗する? オムロンが出した答え 宮田喜一郎・オムロン代表取締役執行役員専務に聞く

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 日経ビジネススクール(日本経済新聞社、日経BP社)は、新事業や経営を担う次世代リーダー向けに、テクノロジーが引き起こす社会や産業の大変革を予測し、それを乗り切る羅針盤となる戦略を伝授する「テクノロジーインパクト2030 第3期」を10月29日に開講します。本稿では登壇する講師に、テクノロジーの進歩が近い将来に何を起こそうとしているのか、ビジネスにどのようなインパクトを与えると考えているのかを聞きます。

「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な仕事を」

 「オムロン」の社名を聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「血圧計」だろう。2017年には約50%もの世界シェアを獲得し、現在では押しも押されもせぬ血圧計の世界トップメーカーの座をつかんだ。

 しかし同社は、血圧計メーカーとしてスタートを切ったわけではない。過去を振り返ると、1933年の創業当初はスイッチやリレーといった電子部品が主力製品だった。1955年には、「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な仕事を楽しむべきである」という創業者・立石一真氏の哲学の下、オートメーション(自動化)機器に事業を広げた。血圧計を初めて製品化したのは、さらにその後の1973年のことだ。

 そのオムロンがさらなる成長を目指し、ソーシャルニーズの創造につながる革新的なイノベーションの創出に向けた「技術経営」の強化に取り組んでいる。2018年に入って、この取り組みを加速するためにCTO(最高技術責任者)直轄の組織として「イノベーション推進本部(IXI)」を設立。さらに「近未来デザイン」を担う組織として、「オムロン サイニックエックス(OSX)」を新会社としてIXIの直下に設立した。OSXは3~5年先の近未来の姿を「超」具体的に予測し、そこから新しい事業のアーキテクチャーを創り出す組織だ。

 今回は、オムロンのCTO 兼 技術・知財本部長 兼 イノベーション推進本部長を務める宮田喜一郎氏に新しい組織の設立の狙いや、同社における技術経営の具体的な方向性、近未来デザインの概要などについて聞いた。

世の中が気づいていない社会のニーズをつくる

――「技術経営」という言葉は、人によってイメージする内容が異なります。まずは、宮田さんが考える技術経営の定義を教えてください。

 オムロンの技術経営は、「SINIC(サイニック、Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution)理論」に立脚しています。これは、「世の中を変えるためには、この先に社会がどのように変容するかを読む必要がある」と考えた創業者の立石一真が、1970年に提唱した未来予測理論です。

 この理論は、「『科学』『技術』『社会』が相互に作用しながら社会が発展して行く」という考え方をベースにしています。循環の方向は大きく2つあります。1つは、新しい科学が新しい技術を生み、それが社会へのインパクトとなって社会の変容を促す方向。もう1つは、社会のニーズが新しい技術開発を促し、それが新しい科学が生まれるキッカケになるという方向です。

 創業者がSINIC理論を考えていた1960年代は、ちょうど自動化社会の幕開けのころでした。その時代に「情報化社会が到来し、さらにその次に最適化社会が来るだろう」と既に予測していて、「当時からかなり先を見ていたなぁ」と驚いてしまうほどです。もちろん、インターネットとは呼んでいませんでしたが、情報ネットワークの普及も当時から示唆していました。その後は、エネルギーや産業廃棄物、食料、人権、倫理などの社会的な矛盾が噴出し、それらを解決して最適化に向かうと見ていた。物質的豊かさから、心の豊かさや新しい生き方を求めるといった精神的な価値観が重視され、新しい精神文明に基づく生き方を行動に移していく。それが現在の最適化社会です。

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