新「企業と社員」関係論―人生100年時代に

ミドル層社員にインセンティブはないのか 立命館大学教授 西山 昭彦

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 人生100年時代と言われる。日本の社会は、突然の生涯現役ブームだ。筆者は2001年に『定年自営のすすめ』(講談社)を出版し、この問題をずっと提案し、フォローしてきた。定年後働くには、在職中の生き方が問われる。本連載では、50代でもしっかり仕事をして、なおかつ定年後も働く道を模索する。

企業の昇進インセンティブ

 大企業社員で、60歳で定年退職し、65歳で二度目の定年をした人がいう。

 「一番良かったのは、40代前半かな。仕事の責任もあり、役職もマネジャーでライン職だったし…。あの頃は燃えてたと思う。でも、後半はひどかった。肩書は担当部長や上席とかついたけど、結局ラインでなく、ポストを外れてるので、どこの職場でもお荷物的な存在だったような気がする。もちろん仕事の責任は果たしてきたけど、正直どこか冷めていた。これ以上上に行けないのもわかっていたので」

 会社は社員の働きに対して、昇進というインセンティブを提供する。しかし、社長を頂点とするピラミッド組織を維持する限り、中間まではポストも相当数提供できるが、そこから上はかなり絞り込むことになる。前半は昇進も順調で役員を目標にして人が何割もいるが、確率的にはその実現性は1割もない。部長ポストの任用のところで、ライン部長になれない人が大半である。企業の中でミドル層以降の社員へのインセンティブが急減するのが現状だ。

昇進可能性があれば、まだいい

 役員OBの子会社社長がいう。「本社で執行役員のときは、なった時の昇進スピードから見て、これ以上はないなと感じていた。でも、可能性だけはあるわけだ。しかし、こちらに来たら、先輩を見ても昇進は0%だ。自分の気持ちを保つのがとても難しい。1%あるのとないのは大違いだ」

 本来、子会社へ行った後も、実績があれば昇進はあるべきだが、入社数が増えた時代の大量の社員をかかえ、若手からの昇進圧力にさらされていれば、先輩にはもう席を譲る余裕がない。人事部も年次管理をしており、昇進適齢期をさかのぼって評価しなおし、昇進させる仕組みはとっていない。こうして、その層は会社では「あがり」となる。

社員の最終コース

 多くの社員はミドル期の選別、実質は最終選別を経て、非ライン管理職として過ごすことになる。肩書は様々だ。主幹、審議役、シニアマネジャー、本部長付…。そして、50代半ばには最後の二本の道が示される。ここからは、ポスト者も年齢によるポストオフになるので、同じ選択を迫られることになる。

 「60歳以降も本体に残って嘱託になるのか、子会社、取引先等へ出向するのか」。これは大企業サラリーマンにとって最後の分かれ道だ。

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