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就活を「自由化・通年化」しても、うまくいかないこれだけの理由 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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大学1年から採用するという話は、過去に類似事例多数。結果は芳しくない

 ついでに書いておくと、昨今では、メルカリが1年生から採用し、彼らを大学時代に勤務させ、育成するとを謳い、それを何も知らない一部識者が高評価してもいる。こちらも結果は同じになることが見えている。すでに大手アパレル企業や管理系ソフトウェア大手などで、超早期採用―社内育成は行われて来た。その結果は芳しいものではない。手塩にかけて育てた優秀者な学生の多くが、4年次の就活本番時期に総合商社などにどんどん応募して流出してしまった。このあたりは、2001年時の2年次末採用と同じ類の話しだろう。

 前述の管理系ソフトウェア大手などは、「他社に就職しても5年以内なら、採用する」という入社パスポートまで用意するほど、涙ぐましい努力をしている。流出はそれほど激しいということだ。

 よく、就活時期ルールに関して、規制だというとらえ方をする人がいる。もう、日本型新卒採用は風前の灯であり、それを既得権益者たちが守るためにルールを設けているという意味だ。現実は異なる。貿易でも雇用でも、市場に任せて自由にしていたら、ひどい殴り合いが起こり、皆が消耗することになる。だから公正な競争を行うために調整が必要となる。就活時期ルールはそういう「調整」のたぐいのものだろう。

 就活の場合、産業界だけでも殴り合いの消耗戦が繰り広げられるが、ここにまったく論理の異なる教育界まで加わる。とすると、自由化で市場にて解決するのは無理だ。だから調整としてのルールが必要なのであり、既得権保護のための規制ではない。

就活ルールとは既得権保護ではなく、過当競争防止のための調整機能

 結局、日本型新卒採用であれば、自由化のメリットは少なく、超早期化による消耗戦というデメリットばかりが際立つ。そこで産学が歩み寄り、2002年に4年生4月1日に面接解禁というルールにひとまず落ち着いた。

 このスケジュールだと、就活で学生の物理的拘束が一番大きい会社説明会が3年終わりの春休みに集中するため、学業阻害は比較的少ない。だから、そこそこ良き状態だった。そこに2010年7月、就活のことなど全く知らない門外漢の科学者団体である日本学術会議が、就活全体の後ろ倒しを示唆する報告書を発表する。同年9月、大学・短大・高専の協議機関である就職問題懇談会がこれに呼応し、翌年11月に商社が加盟する業界団体、日本貿易会が歩調をそろえた。

 2012年2月になると、経団連と並ぶもうひとつの経済団体、経済同友会が「新卒採用問題に対する意見」を発表。歩調を合わせるように「広報開始を3月」「選考活は8月から」と提言しこの流れは次第に本流となっていく。

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