テクノロジーインパクト2030 Picks

マネーこそ技術の未来変える最強ゲームチェンジャー 本澤実・KEIRETSU JAPAN 最高顧問に聞く

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

――英国留学後は、どのような仕事に取り組んだのですか。

 1987年に日本に帰ってきて、すぐに米国での投融資の仕事に携わりました。米国ではちょうどレバレッジドバイアウト(LBO)が全盛の時代で、そのピークが1989年のRJRナビスコのLBOです。KKRがRJRナビスコの経営陣とLBO合戦を繰り広げて勝利を収めました。それをファイナンスの側面で支援したのが日本の大手銀行団で、その一角に私が勤めていた銀行がありました。

 ところが、その直後に米国経済は一気に不況へと転落していきます。1990年代初めはどん底で、企業倒産の嵐でした。このため私はずっと手掛けていたLBOや不動産売買という前向きな業務から一転、不良債権に関する仕事に取り組むことになったのです。

――希望して、不良債権に関する仕事に携わったのですか。

 LBOや不動産売買で私が担当した案件が、どんどん不良債権化していきましたので、希望してというよりはやらざるを得なかったというのが正直なところです。でも、結果的に不良債権の取引市場ができる前から、その後の企業が再生するまでのすべての過程を体験できました。

 その後、1990年代半ばから今度は日本の金融機関で不良債権問題が注目を集めるようになりました。そのときに外資系銀行の友人から「日本でも不良債権ビジネスがやりたい。協力してほしい」という声が掛かり、オランダのING銀行に転職しました。

 約7年間、日本の不良債権処理の呼び水としてのビジネスを徹底してやり、2002年頃に別の友人から日本政策投資銀行と一緒にファンドを作ろうと声を掛けられました。そこで、「日本みらいキャピタル」というファンドを設立して、そこに移籍しました。不良債権処理とその後の企業再生の仕事に関わる中で、「プライベート・エクイティーはこれから日本でも大きくなる。マネジメント・バイアウト(MBO)のような企業買収ビジネスが活発になる」と考えたからです。

マネーは最大のゲームチェンジャーだが……

――不良債権処理や企業買収など「マネー」を動かす仕事を長く続けてきた本澤さんが、KEIRETSUが手掛けるような新しいテクノロジーへの投資に興味を持ったのは、なぜでしょうか。

 先ほど話したようにレーガン革命以降、マネー経済は拡大を続けています。これは裏を返せば、金融市場の相場が上がっているということです。一方で、マネーの価値は相場の逆数なので、どんどん低下しています。

 今後もマネー経済が拡大を続けていけるのかといえば、そうではないでしょう。歴史的にそういう時代が永遠に続いた例はないからです。どこかで根本からこの流れを修正することができなければ、現在の通貨システムが存続することは難しいのではないでしょうか。

 通貨システムは実体経済や金融を支える存在で、コンピューターで言えばOS(基本ソフト)のようなものです。お店に行けば、通貨制度など知らなくても誰でもお金を使えます。コンピューターのOSと同じように普段は全く意識しなくていい。でも、OSが大きく変わってしまったら、途端に困ってしまう。だから、通貨システムの変化は社会やビジネスのゲームチェンジを迫る破壊的な動きにつながります。その変化が起きると、誰一人として逃れられません。

 それでも、この40年間、マネーの価値が下がり続けていることは事実です。金利はマネーの価格ですから、ゼロ金利はマネーの価格が限りなく下がっていることを意味します。そういう時代にマネーゲームを続けても意味がないというのが私の考えです。もっと実体経済に近い領域に注力して、真のゲームチェンジャーであるマネー経済の変化を観察していった方がいい。それともう一つの理由は、資源の少ない我が国にとって、テクノロジーは発展を続けていくためになくてはならないものだからです。これが、新しいテクノロジーに投資するエンジェルの仕事に関わるようになった理由です。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。