テクノロジーインパクト2030 Picks

マネーこそ技術の未来変える最強ゲームチェンジャー 本澤実・KEIRETSU JAPAN 最高顧問に聞く

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

――本澤さん自身は、金融業界でその歴史を目撃してきた。でも、もともとの出身学部は理系ですよね。

 はい。農学部の出身です。実は化学を勉強したくて理系を選んだのですが、たまたま履修した教養科目の経済学にとても関心を持って、農業経済学を専攻として選びました。農業経済は、農業に関する政策、農家の経済や経営を中心に学ぶ学問です。特徴は、目的がはっきりしていること。もう一つ重要なことは、土壌学、植物栄養学や農業機械など理系科目も万遍なく学ぶことです。農業という対象を全体的にみることで、物事を有機的に考えることができるようになると思います。農業は人間が生きる上で最も根本的な分野ですから、とても地に足が着いた学問なのです。

――卒業後の進路には、銀行を選んでいます。

 1981年の卒業ですから、まだ理系の学生が銀行に就職するのは珍しい時代でした。当時の銀行と言えば、ほとんどは法学部や経済学部の卒業生でしたから。銀行を選んだ理由は、欧米に留学したかったからです。最初の4年間は、国内で様々な業務に携わりましたが、その後、英国のケンブリッジ大学の経済学コースに留学して、マスター(修士号)を取得しました。

 留学した1985~1987年はサッチャー政権の全盛期で、英国社会が大きく変革を遂げた時期です。1986年には、英国の金融改革、いわゆる「ビッグバン」が起きました。当時のことは今でも鮮明に覚えています。1986年10月27日の朝、BBC(英国放送協会)にチャンネルを合わせると、まさに宇宙のビッグバンが起きたような映像が流れ、「今日からビッグバンが始まる」といった空気を醸成していました。

 英国での体験は、私の価値観形成に最も大きな影響を与えました。今でこそ、英国は「欧州の1つの国」という認識が強いですが、歴史的に見ればかつて世界の覇権を握ったことがある国であり、基軸通貨「ポンド」を運営したこともある国です。そうした歴史的な重みを、サッチャー首相の議会での発言を聞いていて何度も感じました。

 当時、米国の大統領はロナルド・レーガンで、レーガンとサッチャーが世界的な構造改革を巻き起こしました。これを目の当たりにしたことが、後に私がエンジェルに関わる仕事を志した話につながります。

起点は「ニクソンショック」と「レーガン革命」

――レーガン政権の構造改革とはどのようなものですか。

 レーガンの大統領就任は1981年。それから米国の金融政策はガラリと変わりました。

 その政策転換を歴史的に見ると、さらに10年前の1971年に起きた「ニクソン・ショック」に遡ります。米ドル紙幣と金との兌換を停止したことで世界の通貨制度が大きく変化しました。米国の株式市場で優良銘柄に投資家の人気が集まる「ニフティーフィフティー(人気の50銘柄)」という現象が生じたのもこの時代です。

 要するに、経済全体は思わしくない展開で、ニューヨークのダウ平均株価があまり変動しない状況になったわけです。その後、1970年代後半からのカーター政権の時代には、米国経済が最も落ち込みました。スタグフレーションに陥り、金利も失業率も高止まりして、先行き不透明な時代でした。

 その状況を受けて改革に着手したのが新自由主義を掲げたレーガン政権です。いわゆるレーガン革命の中核は規制緩和であり、市場機能の重視でした。経済金融政策は、供給重視のサプライサイダーと、通貨供給量を重視するマネタリズムを2つの柱とするものでした。1970年代の米国が構造改革の方向性を模索していた時代とすると、1980年代はその方向性が明確になった時代と言えるでしょう。

 企業の観点では、1970年代の米国は大企業が傘下に何百社という子会社を抱えるコングロマリット全盛の時代でした。1980年代に入ると、第4次M&A(合併・買収)ブームが起きて大企業が分解されていった。

 現在の社会は、こうした変革が起きたレーガン革命の延長線上にあります。その根本には、ニクソン・ショックがあったといえます。つまり、フィアット・カレンシー(不換通貨)という不換紙幣体制の中で金融市場が拡大する。これがレーガン革命以降で起きていることです。それから現在までの40年間は、通貨供給量が増え続けて、資金調達がどんどん容易になっていく状況が続いています。このマネーがあり余っている状況が、1980年代から米国でエンジェル投資家の活動が活発になる大きな契機になったのです。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。