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「有期で雇用する」ことの意味を考え直そう 弁護士 丸尾拓養

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有期労働契約の企業にとっての必要性

 労働契約の期間について、「有期」、「無期」という言い方が日常的になってきています。従来は「期間の定めがある」、「期間の定めのない」という表現が通常でした。特に、「無期」は「無期懲役」を思い起こすからか、やや使いにくく感じたものです。いわゆる正社員を「無期」契約労働者として理解することは馴染みがなく、むしろ60歳定年の労働者として理解していました。

 労働基準法14条1項本文は「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年を超える期間について締結してはならない。」(注:例外として5年)と規定し、一つの有期労働契約の期間の上限を定めています。一方で、労働契約法17条2項は、「使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と規定し、使用者に対し反復更新についての配慮を求めています。さらに、労働契約法18条1項は、更新した結果として通算5年超となった場合に労働者に無期転換の申込権が生じることを規定し、権利行使の効果として次期の労働契約の期間が期間の定めのないものに転じることになります。

 この有期契約労働者について、正社員ではない労働者、期間の定めのない労働者ではない労働者とみることにより、弱い立場にあり強く保護すべき対象として論じられることが通例でした。「弱者」としての非正規雇用者という視点に立って論じられます。短時間労働者(パートタイム労働者)、女性労働者、派遣労働者などと同列とされたのでしょう。

 しかしながら、有期契約労働者に対する雇止めに関する最高裁判所の判断は、「臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」というものでした。正規雇用者に対する強い保護と対比したとき、有期契約労働者の雇用保障の程度は、一般的に弱いものでした。

 この最高裁判決は、保護の程度の差異の理由として採用手続を挙げていました。たしかに、使用者が労働者の採用で有期と無期の2種類を用意したのは、労働者の人材としての質もあるでしょう。最高裁が内定や試用での解雇権濫用法理の在り方について「管理職要員」を挙げていたのは、労働者側に目を向ければ、その質という部分を意識していたのでしょう。

 しかし、今日のように労働力不足に使用者が悩む状況をみると、無期で、さらには正規雇用で使用者が雇用したのは、使用者側にその必要性が存したからであることがわかります。「管理職要員」の「要」は使用者としての必要性を示すものだったのかもしれません。そこでは質はその一事情にすぎません。使用者は必要があれば期間が定めのない雇用を積極的に行います。しかし、必要がなければ期間の定めのない雇用に消極的となり、結果として有期雇用や派遣・請負会社などの外部労働力が増加します。

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