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介護離職が年10万人 40代襲う「息子介護」、会社を辞めないで! リクシス創業者 酒井穣氏に聞く

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 高齢化の進む日本では、介護を必要とする高齢者の数も増加していきます。現在、75歳以上で2割以上、85歳以上では6割の高齢者が、介護を必要としています。こうした背景を受けて、親や家族の介護にたずさわる現役の会社員は約2割となっています。今のところは50代以上が中心です。しかし40代以下であっても、仕事と介護の両立に苦しんでいる人が増えつつあります。会社での責任も重くなる40代や50代の人材が、仕事と介護の両立に耐えかねて会社を辞める「介護離職」は、近未来、急増すると予測されています。

 ビジネスパーソンが親の介護に直面したとき、どうすればよいのでしょう。20年以上にわたって母親の介護と仕事を両立させてきた酒井穣氏に聞きました。会社経営のかたわら執筆した『はじめての課長の教科書』など多数の著書がある酒井氏は、現在は株式会社リクシスにて介護支援ビジネスを手がけています。また、介護支援メディアKAIGO LABの編集長も務めています。

お知らせ
酒井穣氏が2018年10月31日(水)、講座「介護離職のリスク対策」に登壇します。
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危険すぎる「息子介護」

――酒井さんがコメンテーターとして出演されたNHKのクローズアップ現代+「“息子介護”の希望をさがして」(2018年7月放送)が、ビジネスパーソンの間でとても話題になりました。

 「息子介護」という言葉は耳慣れないかもしれません。しかしこれは、現代のビジネスパーソンの多くが抱えている巨大なリスクです。男性の平均寿命も80歳を超え、40代、50代のビジネスパーソンの両親は、今は元気なように見えても、いつ介護が必要になるかわかりません。親は子供に心配かけまいと、実際よりも元気そうに振る舞うものです。そうして「急に」介護が必要になったとき、ちょっと前の時代までは、大黒柱の男性ではなく、その妻(両親からすれば嫁)が介護を担っていたのです。

 ところが、家族のありかたは大きく変化しました。専業主婦のいない共働き世帯が増加し、未婚者もまた増えています。いまでも、自分の妻に介護の役割をひそかに期待している夫は多いのです。しかし現代の嫁は、前の時代とは異なり、夫の親(義理の両親)と良好な関係が築けているというケースは稀だったりもします。自分の仕事もあります。そんな妻が、自分の仕事や子供の世話を犠牲にしてまで、義理の両親の介護をしてくれることはほとんどありません。その結果、必然的に息子が自分の親を介護するという「息子介護」が増えています。恐ろしいのは、まだ、息子が親の介護する割合は1割足らずという段階なのに、すでに高齢者の虐待の4割以上を息子が占めているという事実です。今後「息子介護」が増えていくと、虐待もさらに深刻なものになっていくでしょう。

――「息子介護」はなぜうまくいかないのでしょうか。

 男性は仕事中心の生活をおくりやすく、一般に、女性に比べて仕事以外でのつながりが希薄です。当然、親が暮らしている地域でのつながりもありません。それが遠距離介護であればなおさらです。特に介護のはじまりにおいては、介護保険制度などに関する知識が不足した状態になります。そうした状態においては、周囲の助けを受けられるかどうかが鍵になります。しかし男性は、仕事以外での関係性がない場合が多いばかりか、そもそも他人に助けを求めるという行為自体を嫌う傾向にもあるようです。

 そんな息子は、親のために、周囲の力を借りないで、自分だけでなんとかしようとしがちです。結果として会社も頻繁に休むので会社に居づらくなり、介護離職をすることもあります。しかし、そうして退職し、一人きりで介護をすることになると、24時間365日休みなしという状態が、親が死ぬまで(数年から10年以上)も続きます。この間の収入は途絶えがちなので、当然、貯蓄もあっという間になくなります。そうした希望のない状態で、密室で介護が続くと、虐待という最悪の事態にも発展しやすいのです。

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