すべての人に、衣食住に必要な生計費を国が支給するベーシックインカム(BI)は実現可能だと、原田泰氏は「ベーシック・インカム~国家は貧困問題を解決できるのか~」(中公新書)にて説いた。
支給額を月13万円に増やすと、行政サービスは縮小できない
結果、人々は貧困や苦役から解放され、また、不要な行政サービスは廃止でき、国家運営もスムーズになるという。
が、氏の示す月額7万円のBIでは、とてもとても生活保護・年金・失業給付などは代替できず、追加支給のために二重行政となることを示した。そうした行政サービスを代替するためには、月額13万円にBIは増額する必要があり、その場合の予算規模は約200兆円、所得税率は80%(等価調整後でも50%)にもなる。つまり、「行政サービス縮小」とうい謳い文句はまるで成り立たないという第一の破綻点を前回書いた。
誰が得をして、誰が損をするのか
今回は負担と利益のバランスについての問題を考えていこう。
いったい、原田型BIでは誰が得をし、誰が損をするのか、ということだ。
まず、月額7万円という中途半端なBI額について、原田氏は、著書の中でこう書いている。
「日本の生活保護は、審査が厳しすぎる。だから支給対象者が少ない。一方で、支給されている人の額は高い。もっと、審査は緩く、広く浅く支給すべきだ」。だから月7万円を国民全員に、という話になる。
そして貧困者の代表として非正規雇用者を上げ、彼らの生活底上げをすべしと以下のように言う。
「すでに日本では労働者の4割が非正規となっている。これが格差の原因である。彼らにしっかりサポートするためには、BI的な施策が必要だ」
この両方とも、現実からとは大きく異なる。