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ベーシックインカムでは「日本は幸せになれない」 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 現実的にはもっと大きな問題がある。生活保護で生計費を支給されている人は、医療費なども補助される。その額が年間2兆円にもなるのだが、こうした医療費補助は現在ならば、生計費支給時に所得・資産状態を審査されているため、追加審査は不要となる。

 ところがもし、BIで生計費関連が不支給となれば、医療費補助の方で新たな審査が必要となる。その行政コストは大きいし、「審査を受ける精神的苦痛をなくす」というBIの謳い文句も看板倒れに終わることとなる。

 こんな批判を想定してか、原田氏は書中で、そもそも健康保険自体を新たなものに作り変え、負担を軽減すべき、と以下のような案を示す。

■下記のような軽減オプションを用意、保険料負担を軽くする。
(1)終末治療を受けない
(2)無駄な延命治療を受けない
(3)無駄な治療を受けない(たとえばアメリカの医学学会が疑問を呈しているようながん検診・がん治療などを受けない)

 こうして保険料が軽くなったとしても、現生活保護者たちは、たった7万円のBIからこの保険料を支払うのだろうか。それはやはり無理なので、生活保護申請して、審査を受けねばならないだろう。結局やはり、行政コストも受給者の苦痛も軽減などできはしない。

 失業給付に関しても全く同じだ。現在失業給付は月額24万7500円が支給上限となっている。7万円のBIではとてもとてもカバーなどできない。ちなみに、30歳勤続2年、月給25万円(残業代込み)で計算した場合でも失業給付は月額約16万円となる。「BIで行政サービスが代替」など正気の沙汰とは思えないだろう。

「月額7万円」という中途半端な額では機能せず

 年金はどうか?

 こちらなど、年金問題が騒がれる中で、一部ネット民からは、BIが救世主のように崇められているが、現実はあまりにも寒い。現在年金は、3階建て構造となっており、誰にも共通に支払われる1階部分(基礎年金)、給与所得者に支払られる2階部分(厚生年金・共済年金)、企業や一部公務員などが独自に加盟する3階部分(企業年金や職域加算)からなる。

 このうち、BIで代替を想定するのは1階部分だけだ。拠出額でも積立準備額でも圧倒的に大きな2階や3階はそのまま作業が残存する。

 結局「月額7万円」という中途半端な額では、現状の行政サービスを代替できず、二重負担が発生するだけなのだ。本当に行政サービスを撤廃できるレベルを考えるなら、前述した「生活保護費の平均的な支給額=月額13万円」を一つの目安にすべきだろう。

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