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ベーシックインカムでは「日本は幸せになれない」 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 国民全員に、衣食住に必要な生計費を支給する制度であるベーシックインカム(BI)は実現可能か。原田泰氏は、フリードマン型「負の所得税方式」ならば、問題なく実行できると説く。

行政サービスが簡素化できるとのごまかし

 前号書いたその概要は以下の通りだ。

■全成人に月7万円(未成年は3万円)支給。
■総予算は96兆円
■財源(1)所得税を廃止して、給与原資に一律30%の新所得税をかける。これで63兆円増収。
■財源(2)基礎年金・失業給付・生活保護などを縮小・廃止。21.8兆円の財源。
■財源(3)失業対策としての公共事業廃止。5兆円の財源。
■財源(4)民生予算の縮小。5兆円の財源。
■財源(5)固定資産税の米国並み課税。5兆円の財源。

 この話はBIにサービスを集中して、余計な行政サービスを切り捨てるという文脈で語られているために、多くの読者がことの本質を見落としがちだ。財源(1)~(4)により、国民負担は68兆円も増える。現在の総税収の倍以上に増税されていることが、ごまかされているのだ。

 68兆円増税したうえで、多種行政サービスを廃止し、その上で、サービスはBI一本にする、と書いたら、「それがいい」という人はかなり減るだろう。この点については次回に詳細を書く。

 ただ、謳い文句通りに「余計な行政サービス」を削減できるならまだいい。現実的には、それさえも、ほとんど実行不可能なのだ。とすると、増税だけして行政サービスは軽減できないという、「とんでも話」になる。今回はこの「行政サービスが削減できない」点について書いていく。

健康保険制度も再構築が必要となる

 まず、BIの支給額は月7万円であり、これは老齢基礎年金の満期支払い額(月6万6000円)水準に合わせたという。しかし、老齢基礎年金は最低水準の衣食住を満たす金額設定とはなっていない。

 理由は以下の通りだ。

(1)サラリーマンが退職した場合、基礎年金(1階)に付加して厚生年金・共済金(2階)、厚生年金基金・共済年金職域加算(3階)が支払われる。モデルケースの場合で見れば、2・3階の合計は1階部分の2倍程度となる。
(2)サラリーマン以外の自営業者は定年がないため、高齢期でも事業を縮小しながら継続できるため、1階+αの収入が得られる。
(3)そもそも年金とは「ブースター機能」と考えられている。それは、年金と現役時代の蓄積と合わせて生活を設計する、という意味のものである。

 常識で考えても7万円で、衣食住が足るわけなどないだろう。実際、現在の生活保護費の平均的な支給額は月額13万円となっている。とするとBIとの差額で6万円程度が補填されないと、現状の生活保護並みの生活は維持できない。この「追加給付作業」が発生すると、支給額は減るが、支給にかかわる申請→審査→支払い→管理などの業務は一切減らないことになる。

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