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ベーシックインカムが現実的でない2つの根拠 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 つまり、国民負担4.1兆円に対して生産規模4.9兆円というとんでもない非効率な市場を作り上げている、というのだ。それならば、その国民負担をすべて農家に補助金として、生産額に応じて「バラマキ」すれば、今以上の効率的な農業ができ、同時の行政サービスも軽減できる。絶対その方が効率的だ、という。

東京一極集中を食い止められない現実

 こうした政府の裁量的施策を嫌うリバタリアンの論調が分からないわけではない。たとえば、原田氏が排すべきとした「所得控除」は税の逆進性(富裕層の有利さ)や徴税手続きの複雑さ、など今でも問題を指摘する識者は多い。

 また、失業対策や民生などのためにやっている中小企業対策や地域振興策には、首をかしげる類のものも多い。たとえば、UIターンや地域創生などは、第二次全国総合開発計画より40年以上も歴史があるが、それでいて世界的に類を見ない東京一極集中を招いている。

 例を挙げておこう。年間10億ドル以上の収益がある大企業の本社数では、東京が613と他を圧倒し、2位のニューヨーク(217)の三倍近い数字。東京と比べて旗色の悪い大阪でさえ174でなんと世界第4位に入る。こうした大企業の収益合計額で見ても東京5231億ドルで2位のパリ(2785億円)の2倍にもなり、大阪もやはり8位にランクインする。いかに、地域創生やUIターンなど政府施策でうまくいかなかったか、が見て取れる。

地元サービスが機能しているか疑問も

 一方で、地方の民生費からは、高齢者に「マッサージ補助券」を支給している例や、結婚相談、街バル(飲み歩き)補助などなど、本当に必要なのかと思われる事業がいくらでもあげられる。そしてその多くが、議員や首長の手柄話として人気取りに使われてもいる。さらに言えば、そんな「地元サービス」を百出させたがために、住民の公共への要望は高まり、日本の公務員はその数に比して大量なる業務をこなさねばならないという、世界一忙しいパブリック・サーバントと化している。

 つまり細々とした政策は、利権と無駄に直結するから百害あって一利なし、という原田氏の主張もある面、納得できるところではある。

 こんな感じでお偉い識者のありがたきご託宣により、BIは天下の正道とも思われがちな今日この頃ではあるのだが、現実的にはここまで合理的に見えた原田型のBIでさえ全く成り立ちはしない。

 その理由について、「行政サービス」と「税負担」の二つの側面から、見ていくことにしたい。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修

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