未来の働き方を大予測

ベーシックインカムが現実的でない2つの根拠 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 国民全員に、衣食住に必要な生計費を支給する制度であるベーシックインカム(BI)は実現可能か。前回はざっと歴史を振り返り、なかなかうまくいかなかったものが、フリードマンの「負の所得税方式」なら、何となくうまくいきそうだ、というところまで解説した。

ベーシックインカムの連載は全4回で、本記事は2回目です。1回目の記事。2回目の記事。3回目の記事。4回目の記事。

フリードマンの「負の所得税方式」は本当に有効か

 今回のこの仕組みを詳細に検証することにしていこう。

 原田泰氏が2015年に上梓した「ベーシック・インカム~国家は貧困問題を解決できるのか~」(中公新書)では、フリードマン方式を用いて日本でBIを実施するためのスキームが事細かに示されている。

 その中身は以下の通りとなる。まず、支給額は月7万円(年84万円)とし、これを全成人に支給(20歳未満は月3万円)することとする。この金額水準は、老齢基礎年金(満額で月額6.6万円)を念頭に置いている。ここまでで、日本全体では、年間総額96兆円の規模となる。

 さて、この財源をどう見繕うか。

 まずは、所得税だが、こちらは「一律30%の税率」に一本化する。そのうえで、給与所得控除や配偶者控除、扶養者控除など様々な「控除」を廃止する。これで徴税作業は大幅に簡素化される。

 そして、企業の人的経費に対して一律30%徴収する仕組みとする。現在、雇用者所得と自営業の混合所得の総計は257.7兆円ほどあるので、その3割だと、77兆円超の税収となる。この大胆な構造変革により、徴税の網羅性は高まり、しかも実際の税務作業はスリムダウンされる。

 ちなみに、77兆円という税額は、現状の所得税(書中データ)13.9兆円よりも63兆円超もの税収増となる。これで、96兆円のBI総額の3分の2近くが捻出できてしまった。あとは33兆円ほどだ。原田氏はそれを以下のように工面できるという。

財源は確保できるように見えるが

 まず、BIで直接的に代替できる行政サービス。

・基礎年金の国庫負担
・子ども手当
・雇用保険(失業給付)
・生活保護(医療費を除く)

 この額が合計21.8兆円もあるので廃止によりBIに向ける。これで残りは11兆円強となる。

 続いて、失業対策のために行っている公共事業なども削減できる。公共事業費は国と地方を合わせると(国民経済計算上の公的資本形成で)21兆円。この4分の1が失業対策的なものと想定して、BI導入時に廃止する。その額5兆円。

 同様に、地方自治体の民生費は生活保護を除いても18.4兆円もある。この3分の1もBIで代替できるとして6兆円が浮く。

 これで原田型BIの財源は賄えるのだが、さらに、固定資産税の減額・控除を廃止して、米国並み税率にする。これにより5兆円の予備財源が確保可能となる。

 とここまでで、ゆうに財源的にはカバーが可能という。

 経済官僚出身の同氏は、他の雰囲気論のBIとは異なり、かなり精緻に数字ととらえている。

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。