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ベーシックインカムが「日本社会の救世主になる」論は本当か 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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行政の簡略化につながり、よいことに見えるが

 これは、所得税の考え方を変えるだけで、社会構造が大きく刷新されることを意味する。国中にはすでにくまなく税務署が配置されているから、新たに大きな徴税・支給などの仕組みを導入する必要はない。この徴税網を利用して、国民全員にBIを一律支給してしまい、同時に所得税も課すという方式をとる。支給・徴収は、BIと所得税額の差分で行う。こうすることで、実際の支給作業は「所得税額がBI額以下の低年収層」のみに限られ、業務量は少なくなる。

 また、BI自体は一定額を全員に、という性質のため、生活保護のように個人資産の状況を把握して認定や減額を行う必要はないし、年金のように過去拠出額に応じた増減管理なども不要だ。

 そして、この方式でBIをしっかり支給することで、今まで行政が苦労して積み上げてきた年金・生活保護・失業給付などの社会保障や産業振興、民生対応などが代替できる。

 要は、政府は税務を徹底するだけの軽微な存在となり、各種行政コストが軽減されるというのだ。こうして行政コストを削減できるから、それを財源とすれば、BIの実現性はさらに高まる。

 こんな魔法の杖が登場し、近年BI論議が盛んになってきたのだ。

 次回は、この方式を日本の社会構造に照らし合わせた場合、どのようなものになるのか、を見ていくことにする。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修

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