未来の働き方を大予測

ベーシックインカムが「日本社会の救世主になる」論は本当か 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 ベーシックインカム(以下「BI」)というものをご存じだろうか?

 政府が国民全員に、生活費を無料支給する制度のことをいう。現在の生活保護のように何かしらの問題があって労働に就けない人にのみを対象とするのではなく、老若男女問わず誰にでも一律に支給するのだ。

嫌な仕事はしなくてよく、社会も裕福になるのか

 これにより、衣食住が一通り満たされる程度のお金を、働かなくとも人々は手に入れることができるようになる。結果、社会は大きく変わる。

 人々はもう、やりたくもない仕事を続けなくても済む。自分の興味関心あることにのみ専念できるのだ。そんな働き方ならば、労働生産性も上がる。だから社会全体が裕福になるという。

 ただし、そのためには元手となる財源が必要となる。現実的なコストを考えれば実現は無理!という反論も長らく唱えられてきた。また、働かなくとも生活費が支給されるなら、人々は怠惰になり、社会の生産性は下がるという批判も根強い。

 それに対して、BI推進派がまた反論する。

 衣食住について国民全員が事足りていれば、国や自治体は今までのような多様な行政サービスを行う必要がなくなる。年金も生活保護も失業対策も中小企業保護さえも、大幅にスリム化できる。そうした分をBIに回せば、財源面は問題がなくなる。また、働かない人が増えて生産性が下がるということに関しては、人々は苦役こそ避けるだろうが、好きな仕事はたとえ給与が低くても(生活費に困らないので)やるようになる。だから社会の総生産は増えると主張をする。

 こんな感じでBI論が甲論乙駁状態となり、近年ネットを中心に盛り上がっているのだ。

 果たしてBIとは意義があるのか。そして実現可能なのか、これから4回かけて検証していくことにしたい。

アンドロイドが生産性をあげれば、すべてが解決するとの誤解

 私がBIに興味を持ち始めたのは、人工知能の行く末について取材を重ねていたころだ。AIとロボティクスの発展により、人間同様のアンドロイドが闊歩する世の中が訪れ、そのころは、多くの仕事が彼らに代替されているようになる。知能・体力的にも人を凌駕するアンドロイドたちが働く未来社会は飛躍的に生産性を伸ばす。しかも彼らには給料は必要ないから、人件費などのコストも低減する。当然、企業の利益は増加していく。

 その一方で人々は仕事を奪われ、日々の生活の糧にも窮するようになる。そこで、政府は大儲けをしている企業に重税をかけ、それを財源に、人々に生活保護として生計費を配るようになる。これが、未来型BIの絵図だ。この頃には、アンドロイドが人間以上に高い生産性で労働に従事しているのだから、BIの額も現在の給与水準を超えるだろう。たとえば、全国民に一律月額30万円、一家四人の標準世帯では120万円とかにもなるのだろう。それでいて、効率性生産性に富む社会だから、物価水準は今よりも下がる。たぶん人々は、本当に豊かなライフ&ライフを謳歌しているはずだ。

 もし、この先、AIやロボティクスの進化が想定かそれ以上なら、そんな社会が来てもおかしくはない。だからBIも遠い将来には実施されていると私も思っている。

 だが、現在すでにそれが実現可能、今すぐ実行すべし!という話には距離を置いている。

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