現場発で考える新しい働き方

ホワイトカラー職場の「危険」はどこにあるか 弁護士 丸尾拓養氏

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脳・心臓疾患の労災認定者の80%超は40歳以上である

 2018年7月6日に厚生労働省が発表した「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」では、17年度に脳・心臓疾患で労災認定された253件(うち死亡は92件。以下同)のうち、40歳代が97件(41件)、50歳代が97件(29件)、60歳以上が32件(7件)となっています。40歳代以上が226件(77件)となり、全体の253件に占める割合は89%(84%)です。厚生労働省の発表は「平成29年度『過労死等の労災補償状況』を公表します」というタイトルでしたが、脳・心臓疾患の過労死の80%超は40歳代以上です。

 同日に発表された「精神障害に関する事案の労災補償状況」では、17年度に精神障害で労災認定された506件(うち自殺[自殺未遂を含む]は98件。以下同)のうち、19歳以下が6件(2件)、20歳代が114件(16件)、30歳代が131件(26件)となっています。39歳以下が251件(44件)となり、全体の506件(98件)に占める割合は50%(45%)です。過去十数年間にわたって39歳以下が過半の状況が続いてきており、精神障害に関する労災は比較的若年者で認定が多くなっています。一般では「中高年のうつ」といわれますが、これは金銭・病気・家庭などに原因があるのでしょう。労災が認められる精神障害では様相を異にします。

 これらを見ると、職場では40歳を境に、40歳未満では精神障害、40歳以上では脳・心臓疾患のリスクがあると見ていいでしょう。若い労働者には脳と心臓との間の血流に疾患が存する人は少ないのに対し、40歳を超えると定期健康診断でひっかかる人が出てきます。こういう血流に関する基礎疾患がある労働者に対し、月80時間を超える時間外労働(週40時間超部分)の強い負荷がかかって発症したとき、業務起因性が認められて労災支給決定がなされることになります。

 成立した働き方改革関連法では36協定の上限が設定されました。この法案の審議の過程では、「過労死」に関する声が大きく聞かれました。しかし、脳・心臓疾患で労災認定される80%超は40歳以上であり、特にホワイトカラーではその多くが管理職であり管理監督者として扱われ、36協定の適用から除外されています。さらには、脳・心臓疾患の支給決定の多い業種(中分類)では、道路貨物運送業が85件であり、253件の支給決定件数の約3分の1を占めています。職種(中分類)では、法人・団体管理職員の支給決定件数は21件です。どの業種・職種のどの年齢層の労働者にリスクがあるかを具体的に把握して、そこに対策を講じることも重要でしょう。漫然と全体に「危険である」と主張するだけでなく、危ない現場に集中的にすみやかに実効的な対策をとることが急がれるでしょう。

安全配慮義務は「危険」な仕事をさせるから生じる

 「安全配慮義務」という概念があります。「配慮義務」であって「義務」ではありません。「配慮」が付されるのは、使用者の権利行使に伴って「配慮」が求められるからです。権利行使がないところに、そもそも「配慮」は不要です。

 「安全配慮義務」は「安全」を含みます。これは「危険」な業務をさせるからです。高所、酷暑の戸外での作業、大型輸送機の運転など業務自体に物理的・肉体的危険があるときに、安全配慮義務が生じます。危険な業務は禁止される場合もありますが、危険な業務を遂行しなければならない場面もあります。危険な業務をさせる使用者は、労働者の安全に配慮しなければなりません。安全の絶対的確保までは不可能であるので、配慮が求められるのです。

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