日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

「がん」に直面した会社員が考えるソーシャルビジネスとは? 慶応大学大学院特任教授/横田アソシエイツ代表取締役 横田浩一

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 サイトは年齢、がん種、ステージ、子どもの年齢など同じ境遇の人を探せ、双方向でコミュニケーションできる機能とした。サイト上では、家族、仕事、お金、病気についてなど様々な悩みが共有される。サイトを立ち上げると、「オフ会」と呼ばれる実際に会って、お茶を飲みながら話をするコミュニティーが生まれた。オフ会では、自然と先輩の患者が、最近患者になったばかりの人の相談を受けることになる。そうすると相談を受けている先輩の患者は「自分の経験が人の役にたっている」という思いを持つようになった。

つながるという幸せ

 京都に住むナオさん(仮名)もその一人だ。「半分あきらめていたけど、キャンサーペアレンツで出会った皆さんと主治医のおかげで、チャレンジしてみようと思えました。~私は膵臓がんで、まだ35歳で、幼い息子がいてすごく不幸に見えるかもしれない。でも私には私の見方をしてくれるひとがいっぱいいるのだから安心して生きればいいんだと思えました」と投稿している。

 大変残念であるが、ナオさんは亡くなった。そして遺書がナオさんの夫により投稿された。「この遺書(?)は、私が死んだとき、キャンサーペアレンツに投稿してねと夫に頼んで書きおいたものです。~がんになってよかったことなんかひとつもありませんでした。~でも、若くしてがんになった人間の中では、私は幸せ者でした。キャンサーペアレンツという場を知り、皆さんと出会えました。インターネットのない時代に闘病されていた方々の孤独を思うと、いろんな方と励まし合い、情報交換し合い、不安を減らし、明るく闘病できる私たちは恵まれています~」

 どのように生きるかも大切だが、どのように死ぬのかも大切だ。ナオさんは最後の残された時間、キャンサーペアレンツというつながりによって、少なからず救われたのだ。

 後日ナオさんの夫から西口さんへお礼のメッセージがあった。「~キャンサーペアレンツと出会う前と後では、ナオの僕への接し方が違うのです。私は夫で側にはいるが、やはり状況が違いすぎて分かり合えない部分がある。そんなナオを救っていただき、精神状態もすごく落ち着いたのを覚えています。~」と書かれていた。キャンサーペアレンツの活動は家族からも感謝される。

患者にしかわからないことを発信

 がん患者同士がつながり、そして社会とつながることでがんに対しての理解を深め、その活動が健康寿命の向上やQOL(社会的視点からの生活の質)を向上させていくことがキャンサーペアレンツの目標だ。

 今後は患者の情報を集め、コンテンツ開発や情報の分析によって収入を向上させる予定だ。また、医療機関と連携してQOLの向上のための研究に対する協力や、厚生労働省がん対策推進協議会の委員として患者の立場からの実態や問題点を伝えるという情報発信など、活動は幅広い。今後、QOLの研究に生かすため、臨床において、その患者がどのような行動をとったのかのデータを収集していく予定だ。

 今のところキャンサーペアレンツの売り上げは、まだまだだ。事業性はそれほどでもないが、社会的な価値は大きい。患者になってみないとわからないことが数多くあり、解決したい課題、目的ははっきりしている。

 西口さんは大阪出身。関西弁で明るく話す講演は、重たい話題でも笑いを誘う。企業内の研修や学校などからの依頼も多い。会員を増やすことや、がんに対する理解をしてもらうことが目的だ。そして1800人の会員も集まった。日記投稿数は5000、つながり数は2000、月間PVは35万になる。

 あとは、ビジネスモデルを考えていくことだ。1800人のコミュニティーが、マネタイズのために大きいか小さいかはいろいろな見方があるが、様々な情報交換をすることや、テストができるようになる。そこからマーケティングのチャンスが生まれる。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。