日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

「がん」に直面した会社員が考えるソーシャルビジネスとは? 慶応大学大学院特任教授/横田アソシエイツ代表取締役 横田浩一

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 第2回日経ソーシャルビジネスコンテストが始まった。今年はSDGsをテーマに開催され、17のゴールのどれか、または複数をビジネスで解決するアイディアを募集する。筆者もアドバイザリーボードを務める。昨年、特別賞を受賞したキャンサーペアレンツ西口洋平さんのケースから、ソーシャルビジネスをどのように組み立てたらよいのかを考えてみよう。

日経ソーシャルビジネスコンテストのご案内
日経ソーシャルビジネスコンテストではSDGsの普及、促進のため、17の開発目標のうちいずれかを解決するアイデア、ビジネスモデルを募集いたします。
詳細・お申し込みはこちらからご確認ください。

自身にがんが見つかったことがきっかけ

 第1回日経ソーシャルビジネスコンテストにおいて特別賞を受賞した西口さん。2015年2月35歳のときにステージ4の胆管がんが見つかった。5年相対生存率は2.9%という厳しい病気だ。告知された当初はとてもショックで、まず考えたのは家族、特に6歳になる娘のことだった。「この子はどうなるんだろう」と悩んだ。

 しかし、同じ病棟の入院患者は高齢者ばかりで、その話題は出しにくい。ごく普通のビジネスパーソンなので、上司にどう報告したらいいか、仕事はどうしたらいいかについても悩んだ。同じ悩みを相談できる相手がいなかった。この体験により、SNSでこどもをもつがん患者をつなげるために2016年、「キャンサーペアレンツ」を立ち上げた。活動を広げるために、同年9月には一般社団法人にした。2018年6月現在で1800人会員がいる。

 このようにソーシャルビジネスは、自分が直面した体験や課題をきっかけに、困りごとをビジネスで解決しようと始めることが多い。ここには本人の強い意志があり、それが行動の力となって、リーダーシップが発揮される。それからビジネスモデルを組み立てていくことになる。これをしたい、しなければいけないという使命感が先にたち、ビジネスモデル化、マネタイズは後になる。

 大企業のマーケティングでのセオリーは、まずサービス・商品企画、それからマーケットリサーチを行い、販促などのマーケティングミックスを計画、展開していく。しかし、多くのソーシャルビジネスでは、「直感」や「まずやってみる」ことが大切になる。その志やエネルギー、行動力に共感する協力者やグッドフォロアーが現れて仲間ができ、ビジネスが拡大していく。

図表:キャンサーペアレンツのコンセプト

できることから可能なリソースで

 西口さんの場合、まず、子どもを持つがん患者とSNSによってつながることを目指した。1年間に新たに発生する18歳未満の子どもがいるがん患者数は56143人(2015年国立がん研究センター)。同じ悩みを持つ人は多いはずだ。この活動を立ち上げるにあたり、病気のことは上司や一部の人にだけ話しており、自分の病気をカミングアウトしなければならなかった。最初に発信したのが2016年4月1日で、エイプリールフールと間違われた。それでも徐々に理解が広がり、西口さんの意思に共感したプログラマーやデザイナーの協力を得ることができた。

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