現場発で考える新しい働き方

同じ会社で定年まで働くことは「有用」なのか 弁護士 丸尾拓養氏

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正規雇用者の雇用の流動化が始まっている 

 日本の雇用システムは長期雇用だといわれてきました。正規雇用者は新卒で入社してから定年まで一つの会社で働き続け、有期の非正規雇用者も期間満了で労働契約関係を終了することなく長期にわたって雇用されました。いわゆる無期転換の法改正のベースとなった研究会報告には、「更新や雇止めの実態を見ると、7割の事業所が雇止めを行ったことがなく、結果として勤続年数が10年を超えるような有期契約労働者も存在する」との一節があります(「有期労働契約研究会報告書」2010年9月10日、厚生労働省発表)。

 しかし、転職者が少ない、または転職者の受け入れに消極的な内部労働市場は大企業または中堅企業だけのものであり、圧倒的多数の労働者が働く中小・零細企業は転職が多い外部労働市場であったことが事実です。労働市場の流動性は使用者によるものよりも、労働者の意思に係るものの方が大きいのでしょう。中小・零細企業では雇用はかつてから流動的なものであり、中途採用や中途退職が一般的でした。もちろん、中小・零細企業でも定年までの長期にわたり一社で雇用され続ける労働者もいます。しかし、労働者全体からみれば少数でした。大企業と中堅企業の長期雇用は労働者にとって雇用が安定する・賃金が下がりにくいという利点がありましたが、一方で転勤や配転で強い人事権行使の対象となりました。

 この10年ほど、正規雇用者の雇用の流動化がさらに進んでいるように思われます。今後、「働き方」の改革が求められることにより、この変化に対応できない一部の中高年の正規雇用者が、本意か否かはともかく、外部労働市場に流入することもあるでしょう。また、すでに若年労働者には「定年まで勤め上げる」という感覚は弱くなっています。近時の労働力不足は、雇用の流動化をさらに促進することでしょう。

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