ソーシャルメディア四半世紀

これからのネットビジネスに欠かせない要素 東京経済大学教授 佐々木裕一

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 実は画像認識は機械学習の一種である深ディープラーニング層学習が得意とする領域であり、写真に何が撮影され、どこで撮影されたか、の判定能力はすでにAIが人間を上回る(He et al., 2016; Weyand et al., 2016)。AIが認識可能ということはそれにテキストを与えることが理論的に可能であることを意味し、ゆえに「飛行機が空を飛んでいる」といったテキストからそのような画像のAIによる生成も可能になっている(Mansimovet al., 2015)。そのため、撮影コストに比べてSNSでの反応が得やすい写真の人間による撮影が大きく減ることは考えにくいものの、やや長い目で見れば、写真も人間に加えてAIがオンラインに投稿するようになっていくし、その技術は広告においても応用され、ECとの連動が進むことは確実だろう。

 テキスト、写真とくれば、次なるリッチ化は動画である。

 動画は、哲学者のドブレ(1994 = 1999)が3つの時期に分けた「メディア圏」のうち、口承性の制約を受けつつ希少な文書が流通する「言語圏」、容易に複製される印刷物が合理的思考を人びとに要求してくる「文字圏」に続く、視聴覚媒体によって書物が力を失う「映像圏」のコンテンツそのものである。しかも人びとの理性よりも感情に強く訴えるものであるから、娯楽、広告と購買促進との親和性が高く、やはり「仕組み」、少なくともECとの連動が進むであろう。

 ただし写真とは異なり、鑑賞に堪える動画の個人における制作コスト(手間・時間)は依然として大きい。加えて一定時間視聴者を拘束するこのコンテンツが、10 代の若者はさておきどれだけの大人に見られ、反応を得られるかも不明ゆえ、一般人による動画投稿がこの先どの水準まで到達するかは定かではない。しかも動画のAIによる生成は静止画よりも少し先の話となる。加えて、2006年という早い時期からグーグル傘下となり世界規模で動画を蓄積してきたユーチューブが、その配信インフラの卓越ぶりもあり独占的地位を占めているため、他のユーザーサイトやSNSへの動画の投稿が絶対量を満たすかはなおさら不透明である。

 このような一般人による動画制作量の不透明さと制作されるコンテンツの質を考慮したコモディティ化しにくいメディアサービスが、A象限に位置づけられる、プロ制作の動画を配信側が編成した番組表にしたがって提供するAbemaTVである。2020年からは1回の電波で飛ばせるデータ量がこれまでの20~50倍になる5G(第5世代)無線サービス網の提供が開始される予定で、利用料金の低下を待つ必要はあるものの、娯楽要素の多い動画の受動的視聴に拍車がかかることは確実である。実際、当初はオンデマンド視聴の代名詞であったユーチューブでも、関連動画を次々と自動再生する機能により放送型に近づいている。

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