ソーシャルメディア四半世紀

これからのネットビジネスに欠かせない要素 東京経済大学教授 佐々木裕一

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 B象限におけるキラーアプリケーションは「SNS/メッセージングアプリ」であり、日本ではフェイスブック、ツイッター、インスタグラム、LINEとなる。いずれも現在では「コミュニケーション」と「情報」が混在するプラットフォームとなり、LINE以外のグローバルSNSはMAUが3億以上と莫大なため日本の有力なユーザーサイト以上に広告収入構成比が高く、逆に「仕組み」化の度合いは少なくとも現段階では低い。翻ってLINEはフェイスブックなどに比べると収益規模がかなり小さいため、現時点ではそれらよりも「仕組み」指向が強く、格安スマホのLINEMOBILE、LINEショッピング、そして決済サービスのLINEPayなどの展開がその証である。

 A象限から事業をスタートさせ資金力を持つようになった一部の日本発ユーザーサイトは、現在、「情報」を活用しながら意思決定と行動を支援する「仕組み」化の途上にある。それが左上のC象限への動きであり、2015年のタイトルを「メディアから仕組みへの助走」としたゆえんでもある。C象限にはECの一形態である「CtoCシェアリングサービス」もあり、その先行者メルカリでは利用者が自分の所有物を投稿し始めたとの分析を示したが、同社はスマートフォンでのフリーマーケットを祖業とし、自バ イクシェアリング転車共有など「仕組み」の他分野展開を目論む。

 ただしC象限で事業的に成功することは難しい。なぜならばグローバルSNSが、2013年以降に日本でもプラットフォーム化し、そこには友人からの投稿に加えニュースや企業PRも流れ込み、多くの者が最初にアクセスするサービスになってしまったからである。このため、ユーザーサイトにしろ他の「仕組み」提供者にしろ、自身のブランド力が必要となる事態が到来した。それがプラットフォーム企業による寡占化の結果であり、「仕組み」化への挑戦者の数が少ない理由である。

 裏返せば、「メディア」に分類される下半分の2象限は、現在も変わらず事業の開始しやすい領域である。しかもアマゾン・ウェブサービスなどのクラウドサービスを使うことによって、サイト運営コストはさらに低下した。だが、このことはAとBの2象限に位置するサービス数の多さと競争の激しさも示している。サービス利用者数と資金調達可能額の相関は変わらず高く、技術革新スピードも加速しているため、ここに位置するサービスのどれだけが10年後に残っているかは定かではない。さらに言えば、今後は自動記事執筆ソフトウェアのAPIも公開され、テキストは必ずしも人間ばかりが書くわけではなくなっていく。つまり、メディア自体が、それがユーザーサイトであれ、そうでないにせよ、今以上にコモディティ化していくのである。

コンテンツ生成のサステナビリティ

 さて次に、「仕組み」になるにせよ、「メディア」にとどまるにせよ、ユーザーサイトやソーシャルメディアの原資となるユーザーコンテンツ生成のサステナビリティに目を向けて見たい。

 ほぼ確実なのは、「コミュニケーション」に分類されるコンテンツは安定的に生成されるだろうことである。しかし「情報」の生成については一考が必要である。

 ユーザーサイトにおけるコンテンツ生成の大きな変化には00 年代半ばの写真の登場があった。2017年には世界でスマートフォン付属のカメラを主として1兆2000億枚も撮影され、この数は2013年からのわずか4年で5400億枚の増加を見せた(Cakebread, 2017)。写真はおしゃべりの種にもなり、別言すれば、制作コストに対して反応を得るというコストパフォーマンスにも優れる。そのため、SNSにおいても写真の投稿が一般化し、写真特化のSNSであるインスタグラムではMAUが8億人を超え(2017年9月)、「仕組み」との関わりでは写真の感情に訴える程度の強さからインスタグラムやピンタレスト(Pinterest)などでECとの連動が進んだ。

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